職場で「ノー」、言うべきタイミングは?

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昇進や昇給につながらないような仕事を振られた場合に引き受けたり断ったりするための考え方とは/Adobe Stock

昇進や昇給につながらないような仕事を振られた場合に引き受けたり断ったりするための考え方とは/Adobe Stock

(CNN) 新しい同僚に仕事を教えることを買って出たものの、その時間を捻出しようとして頭を抱え込む――。

こうした事態はよくあることだが、とりわけ女性の方が多く経験するという。時に管理職は、社員の役割や人事考課、キャリアアップに直接関係のない責務を、部下に自ら引き受けるよう求めたり、場合によっては担当させたりすることがある。だが、いくら上司が助けを求めているからといって、それを自ら進んで引き受ける必要はない。

「昇進につながらない仕事も組織にとっては重要だ。だが、それをやったからといって報われるわけではない」。カーネギーメロン大学の経済学教授で、女性の働き方に関する書籍の共著者であるリンダ・バブコック氏はこう話す。「すべてが業績評価を左右するわけではない。仕事の多くは確認も、感謝も、評価もされない」

その例として、安全性に関する委員会といった全社的なガバナンス委員会の委員を務めること、人事部に所属していないのに採用の手伝いをすること、仕事や職場での対立で他の人を支援することなどが挙げられるという。

「これらは大きな仕事であり、組織運営にとっては非常に役立つ重要な仕事である場合もあるが、日常業務の中核をなすものではなく、自分が本当に評価されるものでもない」(バブコック氏)

確かにこうした人目につかない仕事の多くは、事業を成功させるうえでは必要なものだ。本来これらは均等に配分されるべきだが、必ずしもそうなるとは限らない。

バブコック氏は「昇進につながらない仕事が発生すると、会社はまず女性社員にやってもらおうと考え、男性よりも女性に頼む」と指摘する。同氏が他の3人の教授と実施した調査では、管理職は男性よりも女性にこうした仕事を依頼する確率が50%高いことが分かった。女性の方がこれらの仕事を自ら引き受ける傾向が高いことも明らかになった。

ピッツバーグ大学の経済学教授で、前出の著書の共著者の1人であるリーズ・ベスターランド氏は、人目につかない仕事や裏方の仕事を過度に詰め込むことは、女性のキャリアアップや報酬の妨げとなる可能性があると指摘する。

「能力を生かせない仕事に時間を費やしているということは、自分の潜在能力を発揮できていないことを意味する」とベスターランド氏は述べている。

バブコック氏は、10年以上前に起きた出来事についてこう回想した。同僚の男性が自分のデスクで何時間も研究に没頭している傍ら、自分は何日も会議に忙殺されていた。「私は研究が手につかないでいた。研究こそが昇進に最も有利な仕事であったのに」

そこで同氏は、同僚の男性と自分のスケジュールを比較してみたところ、「全く同じ仕事をしているのに、私たちは違う世界に生きている」ことに気づいたという。

決断を下す

こうした業務外の仕事を増やしすぎると、報酬の範囲を超えた分野でも女性を苦しめかねない。

ベスターランド氏は「このような社内の業務をすべてこなしてしまうと、自分が身につけ、雇われる際に買われたスキルを発揮できる自信を失ってしまう」と述べている。

仕事を引き受けるべきかどうかの判断を巡り、同氏はこう助言する。ある役割において何が昇進に値する仕事で何が昇進に値しない仕事なのかを特定し、どのくらい多くの従業員がその仕事を引き受けることを期待されているかを確認することだ。

「1週間単位では、週1日が基本なのか。それとも週2日なのか。他の従業員はどんな仕事をやっているのか」。ベスターランド氏はこうした質問を同僚や上司にすることや、以下のように尋ねてみることを勧めている。「私は会社にできる限り貢献したいが、そのためにはどうすればよいのか。何を期待されているのか」

相手が期待しているものを感じ取ったら、昇進につながらない仕事の中でも、自分のスキルを最大限に生かせるものと、自分が最も楽しんでやっているものを見極めることを同氏は提案する。

「昇進につながらない仕事の中でも、自分の時間を費やすのに本当に意味のある仕事は何か、もっと戦略的に考えてみてほしい。自分にとって最も理にかなう仕事を見つけることだ」(ベスターランド氏)

また、間接的に昇進につながり得る仕事を探すのもよい。例えば、より上級の幹部に接する機会があるものや、自身のキャリアに役立つスキルが身につけられる仕事だ。

バブコック氏は「今はまだ昇進につながらないかもしれないが、将来的につながる可能性はある」と話している。

自分の決断を評価し、それが自身の人生やキャリアにおける他のさまざまな場面でどのような影響を与えるかじっくりと考えてみよう。

キム・リン・マータフさんは2016年、コンサルティング業務とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)での教職のほか、子どもの心的外傷性ストレスを扱うNCCTSでのパートタイム業務を兼務していたが、大学のある学部長からもうひとつクラスを持つ気はないかと尋ねられた。

マータフさんは教えることにやりがいを感じ、学生と交流することで充実感も得ていた。だが、新たなクラスを作ることは、ただでさえ多忙なスケジュールの中、さらに追加で何時間も働くことを意味する。コンサルティングの仕事は後回しとなり、柔軟性も失われることになる。

「クラスを受け持つことに『イエス』と承諾することは、他の業務に対し『ノー』と言うことだった」とマータフさんは振り返る。

「ノー」と言っても大丈夫

だが「ノー」と言うことは、口で言うほど簡単なことではなく、男性よりも女性に大きな影響を与える可能性がある。

女性が職場で「ノー」と言うとチームプレーヤーとみなされないことがたびたびあることが、バブコック氏の調査で明らかになっている。「女性は気難しいという型にはめられる」と同氏は指摘する。

ノーと断る際には、できない理由にこだわらないことだ。

「人はたいてい言い訳をするが、依頼した側にとってそれは何の役にも立たない。彼らが求めているのは仕事を手伝ってくれる人だけ」とバブコック氏。「自分にとって昇進につながらない仕事を頼まれたとする。その際には、その仕事をすることで昇進につながりそうな人が社内にいるかどうか考えてみよう」

もし、「ノー」と言えないと感じたら、その仕事を引き受けることに同意し、昇進につながらない別の仕事は再割り当てしてもらうよう上司に掛け合うことをバブコック氏は提案する。「この仕事は分割して、部署にいる5人で分担できないだろうか」と尋ねるのもよい。

繰り返し発生する業務が永続的に自分に割り当てられることを避けるには、持ち回り制になるよう体制を整えておくことを勧める。

「ノー」と言うのは従業員の責任ではない

だが、昇進につながらない仕事が均等に割り当てられているかどうかを巡っては、その責任を従業員だけに負わせるべきではない。

「この問題を解決するのは雇用主の責任だ。この人なら引き受けてくれそうだからというだけで、仕事を与えるべきではない。雇用主は従業員が最も得意とする仕事を与えるべきだ」とベスターランド氏は指摘する。

ベスターランド氏は、雇用主は従業員が何に時間を費やすべきか、何を人事考課に含めるかを明確にすべきだと述べている。

バブコック氏は、自身が働いていたある組織では「人助け」が人事考課の評価項目に加わったことに触れ、「昇進につながらない仕事には報酬を与えることができる」と説明した。「それが重要な仕事であれば、報酬を与えるとよい。そうすれば昇進につながり、ひいては誰もが仕事を引き受けたがるようになる」

また企業は、誰が昇進につながらない仕事を一番しているのか、どのように仕事を割り振っているのかにも目を向ける必要がある。

ベスターランド氏は「女性の方が仕事を自ら引き受ける可能性が高いと分かっているのであれば、有志を募るべきではない。持ち回り制にし、毎回1人指名するといい」と提案したうえで、「仕事の配分に関する慣習を変えることが重要なステップだ」と指摘している。

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