コロナ禍でも多忙な航空会社、ただし乗客も貨物も輸送せず

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新型コロナウイルスが世界各地で流行するなか、航空機の移送で忙しいのがジェット・テスト・アンド・トランスポート社だ/Jet Test and Transport
写真特集:コロナ禍でも多忙な航空会社

新型コロナウイルスが世界各地で流行するなか、航空機の移送で忙しいのがジェット・テスト・アンド・トランスポート社だ/Jet Test and Transport

(CNN) ジェット・テスト・アンド・トランスポートは世界規模の航空会社だが、同社の飛行機は片道飛行のみで、乗客も貨物も輸送しない。

実は、同社はフェリー便専門の航空会社で、航空機自体を輸送している。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、航空各社が航空機を駐機させたり、削減したりする中、同社の共同創業者スティーブ・ジョルダーノ氏をはじめ、同社のパイロットたちは多忙な日々を送っている。

世界で運用されている2万機以上の民間航空機の約半分は、各航空会社にリースされている。複数年のリース契約の終了時に、航空会社は再契約するか、飛行機をリース会社に返却するかを決める。

その時が、ジェット・テスト・アンド・トランスポートの出番だ。

最近、航空機リース事業は活況を呈している。商業不動産開発業者が建てた建物や、モールやオフィスビル内で借りるスペースとは異なり、リース先の航空会社が経営不振に陥れば、航空機を返却してもらい、別の航空会社に貸し出すことも可能だ。航空機は、定義上は動産だ。

スペインへ向かう機体のコックピットの様子/Jet Test and Transport
スペインへ向かう機体のコックピットの様子/Jet Test and Transport

「リース満了時に航空機が(リース先の航空会社から)返却されると、われわれはその航空機を次の顧客に届けるか、あるいは駐機施設や整備施設に輸送する」とジョルダーノ氏は言う。

「それがフェリー業務の約半分を占め、残りの半分はその逆で、駐機施設や整備施設から航空機を出して、新たな航空会社に輸送する」(ジョルダーノ氏)

ジョルダーノ氏がジェット・テストを創業したのは2006年だが、同氏はその2~3年前からフェリー事業を開始した。

ジェット・テストは、英領バミューダの航空運送事業許可(AOC)を取得し、組織構造はより規模の大きな航空会社と同じだ。また同社のフライトには「JTN」というコールサイン(呼出符号)もある。

実際、ジェット・テストは小規模の航空会社のように機能している。しかし、他の航空会社との大きな違いは、同社は航空機を所有していないことだ。

またジェット・テストの事業は、単に航空機をA地点からB地点まで輸送するだけではない。ジェット・テストという社名が示唆する通り、同社は整備や改修を終え、「職場」に復帰する航空機の試験飛行も行っている。

機体の大小を問わず何でも飛ばせる!

一般の航空会社のパイロットは1種類の飛行機を何年も操縦するだろうが、ジェット・テストのパイロットは数多くの飛行機を操縦する。

アフガニスタンへ向かう機内で休息するスティーブ・ジョルダーノ氏/Jet Test and Transport
アフガニスタンへ向かう機内で休息するスティーブ・ジョルダーノ氏/Jet Test and Transport

ジェット・テストの場合、年間250本のフライトのうちの8割がフェリーフライト(航空機自体の輸送を目的としたフライト)であるため、ジョルダーノ氏をはじめ同社所属のパイロットは、ほぼ全種類の飛行機のチェックアウト、つまり「タイプレーティング(飛行機の機種ごとの免許)」を取得しなくてはならない。

ジョルダーノ氏のこれまでの総飛行時間は1万8500時間(2年以上に相当)で、その半分はマクドネル・ダグラスMD―80の飛行に費やした。

「1つの機種を9000時間操縦すると、操縦の仕方が完全に身につく。私は、両目を閉じていてもすべてのスイッチの位置が分かる」(ジョルダーノ氏)

ジェット・テストのパイロットたちは、ある機種から別の機種へと飛び移るため、常に多種多様な機種への対応が求められる。

「私は10機種のタイプレーティングを取得しており、私のパートナーたちもそれぞれ10~11機種のタイプレーティングを保有している。常勤、契約社員、非常勤のパイロットたちも大半が最低5機種のタイプレーティングを取得しているので、ありとあらゆる機種への対応が可能」とジョルダーノ氏は胸を張る。

パンデミックの影響

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が宣言されたのは2020年3月だが、ジョルダーノ氏はその前にアジアを飛び回っていたため、新型コロナウイルスについて十分承知していた。

世界各国が感染拡大の抑制に努める中、2月に全世界で旅行が制限されたため、ジェット・テストは基本的に4月まで業務停止を余儀なくされた。

「われわれがそのような状況下でも頑張れたのは、いずれ駐機施設から航空機を出し入れする巨大な需要が生まれると予想していたからだ。われわれには確信があった。そこで、航空機のレッサー(貸し手)たちが、自分たちの航空機をどうすべきか考え始めると、われわれはしばらくの間息をひそめ、(需要の)最初の波が来るのをじっと待った」(ジョルダーノ氏)

感染拡大の影響で飛行機での旅行が大幅に減少したため、世界各国の空港は、使用していない滑走路や誘導路を一時的に稼働していない航空機の駐機場にした。

「それ以来、われわれが行っている業務の大半は、短期の駐機場にあった航空機を引き取り、それらを長期の駐機施設に輸送することだ」(ジョルダーノ氏)

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