モロッコ地震前に謎の発光現象、過去にも世界各地で観測

メキシコ市で目撃された光(写真左) /Antonio Lira

2023.09.14 Thu posted at 12:43 JST

(CNN) モロッコを8日深夜に襲ったマグニチュード(M)6.8の地震が発生する前に、「地震発光」と呼ばれる現象が目撃された。この現象は古代ギリシャにさかのぼり、何世紀にもわたって記録されていた。

光があふれてさまざまな色に輝きながら踊るようなこの現象に、科学者は長年、頭をひねってきた。理由については今も一致した見解はない。それでも「確かな現実」だと、米地質調査所(USGS)の研究員だったジョン・デール氏は言う。

ネットに投稿されたモロッコ地震の動画に映った現象は、南米ペルーのピスコで2007年に起きた地震で防犯カメラがとらえた地震発光によく似ていた。

この現象について調査したペルーの研究者は、携帯電話の動画撮影や防犯カメラの普及によって地震発光の研究がしやすくなったと指摘する。

デール氏が執筆に加わった19年発行の百科事典によると、地震発光は普通の雷のように見えることもあれば、極地のオーロラのような大気中の発光帯に見えることも、宙に浮かぶ光る球体のように見えることもある。地上付近で小さな炎が点滅したり、大きな炎が地面から現れるように見えることもある。

中国の四川省で起きた08年の地震では、明るく光る雲が空に浮かぶ様子が直前に撮影された映像に映っていた。

南米エクアドルのグアヤキルで目撃された光

デール氏の研究チームは地震発光について解明するため、信頼できる地震発光現象の報告に関連した米国と欧州の65回の地震について1600年にまでさかのぼって調べ、2014年に論文を発表した。

それによると、地震発光の約80%はM5.0を超す地震で観測された。ほとんどの場合、地震の直前か揺れている間に、震源から600キロまでの範囲内で目撃されていた。

大きな地震は主に地殻プレートの境界部分やその周辺で発生する。しかしこの研究によれば、発光現象に関連した地震の大多数は、境界ではなく地殻プレートの内側で発生していた。

さらに、地震発光は多くの場合、地殻が引き裂かれて2つの高地の間に細長い低地が形成された地溝帯の近辺で発生していることが分かった。

デール氏の共同研究者で米航空宇宙局(NASA)研究員だったフリードマン・フロイント氏は、地震発光のメカニズムに関して1つの仮説を打ち出している。

フロイント氏によると、岩石の結晶に含まれる不純物は、大地震の前や発生中、岩盤にかかる力が蓄積されるような圧力にさらされると、瞬時に分解して電気を発生させる。

絶縁体である岩石は、圧力がかかると半導体になる。「地震の前に、膨大な量の岩石に圧力がかかり、その圧力が互いに関連した鉱物粒子の変動を引き起こす」「バッテリーのスイッチを入れるように電荷が発生し、圧力がかかった岩石から、圧力がかかっていない岩石へと流れ出す。この電荷は秒速最大200メートル前後の高速で移動する」とフロイント氏は解説している。

ほかにも岩盤の破壊によって静電気が生じるなどの説も提唱されているが、地震発光のメカニズムについて専門家の間で一致した見解はなく、今も解明に向けた研究が続けられている。

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