感染力強い変異ウイルス、重症化にはつながらず 2つの研究で示唆

英国で見つかった変異株に関する2つの研究が発表された/Ariana Drehsler/AFP/Getty Images

2021.04.13 Tue posted at 20:10 JST

(CNN) 英国で発見された新型コロナの変異ウイルス「B.1.1.7」は、感染力が強い半面、重症化には影響しないようだとする2件の研究結果が12日の医学誌に発表された。

B.1.1.7については死亡リスクが大幅に高まる可能性を指摘した別の研究もあり、今回の研究とは矛盾する。

12日の医学誌ランセット・インフェクシャス・ディジーズ誌に掲載された論文では、B.1.1.7が新型コロナウイルス感染症の重症例に関係していることを裏付ける証拠は、入院患者の検体からは見つからなかったと結論付けた。ただ、B.1.1.7はウイルス量の増加に関係していることが分かり、同変異株が原因でウイルスに感染しやすくなるという説が裏付けられている。

もう1つの研究結果は12日のランセット・パブリックヘルス誌に発表された。この研究では、患者が経験した新型コロナウイルス感染症の症状の種類や持続期間とB.1.1.7の間に、統計的に重要な関係は認められなかったとしている。

ランセット・インフェクシャス・ディジーズ誌の研究では、英ロンドンの病院に入院してコロナウイルス検査で陽性反応が出た496人のデータを英国の研究チームが調査した。

変異株と重症化との関係は今回の研究では確認されなかったという

その結果、「B.1.1.7に感染して入院した患者の重症度と、B.1.1.7以外の患者の重症度の間に著しい違いはないことが初期段階で再確認された。我々が新興の変異株の時代へと差しかかる中で、この研究は、同じ疑問に対して再び答えを出すためのモデルを提供する」としている。

検体は11月9日~12月20日にかけ、患者の鼻やのどから綿棒で採取した。そのうち341例についてゲノム解析を行った結果、58%に当たる198人の感染がB.1.1.7によって引き起こされていることが判明。残りはコロナウイルスの別の株が原因だった。

同変異株とそれ以外の株の間に重症化や死亡に関する差異は認められず、重症化したり死亡したりした症例はB.1.1.7に感染した患者が36%だったのに対し、非B.1.1.7の患者は38%だった。死亡例に限ると、28日以内に死亡した患者はB.1.1.7感染者の16%、非B.1.1.7感染者は17%だった。

一方で、B.1.1.7感染者の方が非B.1.1.7感染者に比べて全体的に年齢が低く、併存疾患は少なかった。「恐らくこれは、地域社会でこの変異株が蔓延して感染が増えている可能性、あるいは入院の確率の違いを示唆しているのかもしれないが、病院の患者を対象とするこの研究でそれを探ることはできなかった」

ランセット・パブリックヘルス誌に発表された研究は、新型コロナウイルス検査で陽性と判定され、英国で開発された新型コロナ症状研究アプリに9月28日~12月27日の間に症状を記録した3万6920人のデータを、英国の新型コロナウイルス感染に関する統計と比較して、英国と米国の研究チームが分析した。

変異株の感染者はそれ以外の感染者と比べ全体的に若く、併存疾患も少なかった

その結果、特定地域や時間の経過に伴うB.1.1.7の蔓延状況と、同アプリに報告された新型コロナウイルス感染症の症状の変化や持続期間との間に関係はないことが分かった。

「B.1.1.7の感染が拡大しても、無症状のユーザーの割合が著しく増えることはなかった。この結果は同じ主題の他の研究とも一致している」「病院への入院にも変化はないことが分かった。だが、別の研究ではB.1.1.7変異株が病院への入院率を増加させるという報告もある」と研究チームは指摘している。

この研究では再感染の確率も低いことが分かった。検査で陽性と判定された同アプリのユーザーのうち、90日後に再び陽性反応が出たのは0.7%のみ。B.1.1.7に関連して再感染率が高くなる形跡は認められなかった。

B.1.1.7の感染力の強さについて、今回の研究にかかわっていない英インペリアル・カレッジ・ロンドンのブリッタ・ジュウェル氏は、「B.1.1.7が感染の可能性を増大させることが、この研究で裏付けられた。これが主な原因となって、この研究期間中およびそれ以降に英国で症例数が急増し、欧州各国では第3波が続いてB.1.1.7の負担を増大させている」と解説している。

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