「ワクチンパスポート」で元の生活に?、プライバシー懸念も 米

「新しい日常」への移行には「ワクチンパスポート」が重要や役割を担うかもしれない/New York State

2021.03.31 Wed posted at 19:04 JST

(CNN) あなたが次に結婚式やコンサート、宗教施設、屋内のレストラン、そして仕事場に行くときは、新型コロナウイルスワクチンの接種を受けていることや検査結果が陰性であることを示すデジタル証明書の提示が求められるかもしれない。

ニューヨーク州は26日、全米の州で初となるワクチン証明アプリ「デジタル・ワクチン・パスポート」の提供を始めた。IBMのアプリを利用しブロックチェーン技術に依拠、健康状態を証明するQRコードが表示される。バスケットボールやホッケーの試合会場での検証を踏まえての公開となった。

ワクチン証明アプリは以前の日常生活に戻るのを助ける重要な役割を担うだろう。だがその前に、アプリの提供企業にはやることがある。何年も続くデータ絡みのスキャンダルで不信感が募る市民に、アプリには重大なプライバシーのリスクがないことを納得させることだ。

ニューヨーク州のクオモ知事は、プライバシーへの懸念があることに理解を示した上で、「個人情報は安全に保たれる」と約束した。IBMの幹部も同州のデジタルパスポートは「セキュリティーとプライバシーを中核に据えた柔軟で使いやすいツール」に基づいていると説明した。

だが、誰もが納得しているわけではない。ニューヨーク大学ロースクールのフェローで監視技術に関するプロジェクトを率いるアルバート・フォックス・カーン氏は「日常生活で使うアプリの一部は、以前は匿名だったデジタルインフラに新たな層を作り出す」「雑貨店に牛乳を買いに行くときまでそうした監視はいらない」と語る。

心配の声が多いのは、位置情報や医療関連のデータが収集し保存されるのかどうか、そして誰がその情報にアクセスできるのかという点だ。アプリ提供企業は、企業がデータを保存することはないと説明する。だが、受け止める市民の一部はアプリの利用にためらいを見せる。

検証可能な認証情報の推進団体VCIの共同創設者、ブライアン・アンダーソン氏は、ワクチン接種の証明としてデジタルの健康カードの利用が進むためには「ユーザーの信頼が最優先だ」と語る。そのためには各企業はプライバシーポリシーで公開性や透明性を確保する必要があるという。

QRコードを使ってワクチン接種などの情報を提示する

シリコンバレーのIT企業はこれまで、接触通知アプリなどを通じてコロナ危機への解決策を模索してきた。だが、そうした取り組みは期待には及ばず、新たなパスポートは再び意味のある取り組みができるチャンスとなる。ただ、こうした製品は偽のワクチンカードやデジタルデバイド(情報格差)、個人情報の取り扱いを巡る基準の変化といった多くの課題への対応が迫られる。

プライバシーを巡る懸念はコロナ関連のアプリを導入する他国でも見られる。イスラエル政府承認のワクチン証明プログラムは、非公開のプログラムのためデータの送信先が不明だとして調査が進んでいる。シンガポールでは、法執行当局が刑事捜査目的で接触追跡アプリが収集した個人情報にアクセスしていたことで批判が起きた。

VCIはデータのプラバシーに関する方針を含む米国の基準やガイドラインを策定する重要な役割を担う。そうした仕様は今後数週間で定まる予定。

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