(CNN) スウェーデン王立科学アカデミーは4日、今年のノーベル化学賞をスイス・ローザンヌ大のジャック・デュボシェ名誉教授、米コロンビア大のヨアヒム・フランク教授、英MRC分子生物研究所のリチャード・ヘンダーソン氏に授与すると発表した。ジカウイルス内などにある生体分子を視覚化する新たな手法の開発で画期的な業績を上げたとしている。
王立科学アカデミーの声明によると、受賞理由となった「クライオ電子顕微鏡法」は、動いている生体分子を凍結させ、「従来は観察されていなかったプロセスを視覚化すること」を科学者に可能にするもの。
この技術により、細菌やウイルスの中にある分子などを本来の無傷な状態のまま顕微鏡で観察することができる。「生命の化学的性質の基本理解」や医薬品の開発にとって決定的な役割を果たしているという。
科学者はこれ以前、生命の基盤となっている生体分子の多くについて詳細な画像を作成することができなかった。
従来の技術では通常、こうした分子の観察を容易にするため、染料や定着剤の使用が必要になっていた。
また電子顕微鏡に関しても、電子光線が生体物質を破壊してしまうことから、死んだ物質の画像化にしか有用ではないとみられていた。
フランク氏は電話で会見し、クライオ電子顕微鏡法の開発について「重要なすき間を埋め、原子レベルの解像度で決定されうる分子の範囲を広げるものだ」と指摘。技術の応用範囲は「巨大だ」としたものの、その意味合いが完全に理解されるまでにはあと数年を要するだろうとの見方を示した。
賞金は900万スウェーデンクローナ(約1億2400万円)で、受賞者が複数いる場合には分配される。