(CNN) 米ニューヨークの繁華街タイムズスクエアに、このほど3台の電話ボックスが新しく登場し、通行人や観光客の注目を浴びている。
ボックスの前で足を止め、自撮り写真を撮ろうと中に入る人もいる。ところがそこで電話が鳴り始める。受話器を取ると、音声が流れ出す。
「私は1986年、アイルランドの経済が原因でやって来た。あそこには仕事がなかった。両親は死に、私は仕事を必要としていた」
「私はベラルーシに住んでいて、チェルノブイリの惨事を経験した」
電話から流れる音声は、ベラルーシやバングラデシュ、ガンビア、イエメンなど、世界各地から米国へたどり着いた移民70人が語り手になっている。
仕掛け人はアフガン系米国人アーティストのアマン・モジャディディさん。「世界中で反移民感情が強まる中で、都会の中の移民に焦点を当てたかった」「移民が破壊したのではなく、移民が作り上げたニューヨーク市は、その点でモデルのような都市だった」と語る。
プロジェクトの着想は3年前。ニューヨーク市の5地区で移民のストーリーを集め始めたのは、昨年の大統領選挙の3カ月前だった。食品店に買い物に訪れた人に話かけたり、飲食店で隣のテーブルの会話に耳を傾けたりして話を聞かせてもらったという。
公衆電話はとうに市内から姿を消し、公衆無線LANに取って代わられた。モジャディディさんはそうした公衆電話ボックスを再利用して、移民社会についての情報を掲載した「電話帳」も置いた。落書きはそのまま残した。
7月上旬のある日の午後。ボックスの中に入った通行人は、電話が鳴ると様子が変わり、真剣な表情で耳を傾けていた。
タイムズスクエアの電話ボックス展示は9月5日まで。