ドナーの犯罪歴や病歴に「虚偽」、3家族が精子バンク提訴

2016.04.20 Wed posted at 13:10 JST

(CNN) 精子ドナーはハンサムで健康状態も良好で成績優秀な男性のはずだったのに、実は統合失調症と診断され、大学を中退し、重罪で有罪判決を受けた過去があった――。

米ジョージア州の精子バンクから精子の提供を受けて子どもが生まれた3家族がそう訴え、この精子バンクに1500万ドルの損害賠償を求める訴訟をカナダ・オンタリオ州の裁判所に起こした。企業側は業界基準にはすべて従っていると主張している。

この男性の精子からは、少なくとも36人の子どもが生まれている。

ドナーの審査を怠ったとして訴えられたのは、精子バンクのザイテックス・インターナショナル。原告はほぼ14年がかりで精子ドナーの実情を突き止めたとしている。

原告のうち、オンタリオ州に住むアンジェラ・コリンズさん、エリザベス・ハンソンさんのカップルは2006年に精子ドナーを探し始め、自分たちの医療保険で利用できる精子バンク3社の中からザイテックスを選んだ。

訴状によると、ザイテックスからドナーの徹底審査を行っていると説明され、「ドナー9623」の精子提供を受けることにしたという。経歴書には知能指数160、神経科学の複数の学位保有、健康状態は良好と記載されていて、同社の担当者からも、最高級の精子で需要が高く、なかなか手に入らないと説明されたという。

この精子から、2007年7月19日に男の子が誕生した。

ドナーの身元はザイテックスの規則で開示されないことになっていた。ところが数年後、ザイテックスの手違いで、コリンズさんらがドナーの男性の身元を知ることになる。

自分たちの子どもが受け継いだDNAに興味を持ったコリンズさんらがこの男性の名をグーグルで検索したところ、重罪で有罪を言い渡された過去や大学中退の経歴が判明し、2002年に統合失調症と診断されていたことも分かってショックを受けたという。

コリンズさんらは統合失調症の遺伝的リスクについても調査した。統合失調症は発症関連遺伝子群によって70~100%の確率で発症のリスクがあるとする調査結果も最近発表されている。

この調査結果をザイテックスに提供したにもかかわらず、問題のドナーはデータベースから消去されなかったと原告側は主張する。

コリンズさんらは米ジョージア州の裁判所にも訴えを起こしていたが、この訴えは昨年棄却された。ただ、判決では、代替生殖問題に関する法律は時代遅れになっていると指摘した。

原告側は、ドナーが虚偽の申告を行い、ザイテックスは審査を怠ったと主張。弁護士は「3家族とも、子どもが深刻な精神疾患を発症するリスクが極めて高い。予防措置も存在するが、そのためにはコストがかかる」と訴え、子どもの将来の医療費を積み立てるため、損害賠償を請求するとした。

ザイテックスは弁護士を通じ、業界基準にはすべて従っていると強調した。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。