徴用工問題、韓国と日本が関係改善に向け前進

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日本と韓国の間の徴用工問題を巡り、解決策が発表された/Kim Kyung-Hoon/Reuters

日本と韓国の間の徴用工問題を巡り、解決策が発表された/Kim Kyung-Hoon/Reuters

韓国・ソウル(CNN) 韓国政府は6日、日本統治下の徴用工に対する賠償問題で解決策を発表した。米国の同盟国である日韓両国は、インド太平洋の安全保障環境が厳しさを増す中、関係改善を進めようとしている。

バイデン米大統領は韓国の発表を受け「米国の最も緊密な同盟国2国が協力と提携の画期的な新しい章に入った」と称賛した。

韓国の朴振(パクチン)外相は同日、韓国政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」が民間の寄付金を使い、15人の元徴用工やその遺族に支払いを行う賠償の肩代わり案を発表した。

韓国大法院(最高裁)は2018年、日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業に、1910~45年の日韓併合時に動員された元徴用工の原告15人それぞれに1億ウォン(約1000万円)の賠償金を支払うように命じた。

原告のうち現在生存しているのは3人のみで、全員が90代。

日本の林芳正外相は記者団に「2018年の大法院判決により非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものとして評価する」と述べた。

「韓国政府が発表した措置は、日本企業による財団への拠出等は前提となっていない。 政府としては民間人又は民間企業による国内外での自発的な寄付活動等について特段の立場をとらない」とも語った。

日本側は18年の判決に同意せず、賠償金を支払っていない。

これにより両国間の緊張は高まり日本側が半導体材料の輸出を規制、韓国側は文在寅(ムンジェイン)前政権下で軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を通告する事態となった。

日韓の間には歴史問題が横たわり、日本による韓国支配が依然として両国間の感情的なしこりとなっている。当時多くの韓国人が徴用された。

日韓両国は1965年に国交正常化の条約を締結し、大半の歴史問題が解決すると考えられていた。

だが、韓国は当時軍事独裁政権で、多くの韓国国民がこの取り決めは不公平と感じている。現在も法廷闘争が続く。

日韓両国はまた、日本側が竹島、韓国側が独島と呼ぶ島々の領有権を巡っても50年以上争い続けている。

韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)現政権はそれでも、日韓関係の改善を模索してきた。北朝鮮のミサイル発射実験は日韓両国に脅威を及ぼし、安全保障環境の不安定さが増している。また緊張が高まる台湾海峡は両国の安全保障上極めて重要な地域だ。

朴氏は6日、尹政権が元徴用工の意見を踏まえながら、日韓両国の利益となる「合理的な解決策」を打ち出そうと模索してきたと述べた。

同氏は「長く緊迫した状態にある韓日関係を無視することなく、国益の観点から国民のために悪循環を断ち切る必要があると考えている」と述べ、日韓関係の重要性を説いた。

6日の発表直後には、米国政府の複数の高官が発表を称賛。バイデン氏は日韓両国が「韓国と日本の国民にとって、より安全になり、保障が増し、さらに繁栄する未来を打ち出す重要な一歩を踏み出した」と評価した。

韓国・梨花女子大学のリーフエリック・イーズリー教授はこの点、尹氏、岸田文雄首相とも、今回の解決策を有権者に説明する多難な道が待ち構えていると指摘する。

「両政府は自国にとってのこの合意の利点を説得的に説明し、野党や支援団体の批判をかわさなければならない」(イーズリー氏)

オーストラリア国立大学日本研究所のローレン・リチャードソン氏は、6日の解決策は元徴用工を満足させないだろうと予想する。

同氏は「彼らはこの合意を特に喜びはしないだろう。もし被害者やその子孫であれば、加害者に責任を取らせたいというのは明らかだ」と言及。日本政府は謝罪や過ちを認める姿勢を示そうとしないと付言した。

「これは金銭だけの問題ではない。彼らはこれを見て、日本政府がある種の責任回避をしようとしていると言うだろう」(リチャードソン氏)

原告の一人、梁錦徳さん(95)は韓国政府の発表を非難。記者会見で「全く理解できない。こんなものは95年の人生で見たことがない」と語った。

だが専門家は、尹氏が大きな目的を達成するため、こうした批判を乗り越える準備をしているように見えると指摘する。

東アジア政治に詳しい神奈川大学のコオリ・ウォレス助教は6日の発表について、尹氏が過去9カ月間日本を「パートナー」としてより大胆に受け入れてきたことの自然な成り行きだと見る。

ウォレス氏は、両国が北朝鮮と対峙(たいじ)する中で、3国間の安全保障協力の価値と2国間の対立のコストに関して認識を新たにし始めていると指摘。北朝鮮や中国の軍備拡張や、欧州で起きる最近の出来事も踏まえ、米国の東アジアにおける軍事態勢の持続可能性に日韓両国が抱いている懸念にも関連した動きとの見方を示した。

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