ローマ教皇、ロシア正教会トップを叱責 プーチン氏の「侍者になるな」
(CNN) ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は8日までに、ロシアのウクライナ侵攻に関連しロシア正教会の最高指導者であるキリル総主教に対しプーチン大統領の「侍者になるな」と叱責する発言を示した。
教皇によるこれまでで最も強い調子での同総主教に対する説諭で、侵攻を正当化するロシア政府の主張を認めたキリル氏をとがめもした。
フランシスコ教皇はイタリア紙コリエレ・デラ・セラとの会見で、自らがキリル総主教とオンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を通じて今年3月16日に約40分間話し合ったことに言及した。
一方、ロシア正教会の対外関係部門はフランシスコ教皇の今回の発言は、総主教との会談内容を描写する上で「間違った観点からとらえている」とし、「遺憾である」との声明を発表。「ローマ・カトリック教会とロシア正教会の建設的な対話の構築にも寄与しない。特に現在の情勢の中では」と苦言を呈した。
ロシア国営のタス通信によると、ロシア正教会の報道担当者はまた、西側諸国によるロシアへの制裁策は和平達成を目指す上で「常識外」の措置でもあるとの見方を示した。
フランシスコ教皇は同紙に、キリル氏は最初の20分間、戦争を全て正当化する発言をしたとし、「私は耳を傾け、彼に一切理解出来ないと告げた」と説明。「兄弟よ、我々は国家の聖職者ではなく、政治の言葉でなく神の言葉を使うべきだ」と伝えたとした。
「総主教自身がプーチン(大統領)の侍者に変身することは出来ない」とも説いたという。
教皇によると、この会談で2人は今年6月14日にエルサレムで予定していた会談を延期することでも合意。ウクライナ戦争とは関係なく2度目の対面会談になるはずだったが、総主教は「やめよう。あいまいなシグナルを送る可能性がある」と延期に同調したという。
キリル総主教は今年3月、ウクライナ戦争に触れ、ロシアのより広い独自の世界と西側のリベラル的な価値観との間の根本的な文化の衝突との見方を表明。一例として、性的少数者の当事者らが性の多様性を訴える「プライドパレード」の是非にも触れていた。
総主教の主張は、ロシア帝国の復活により大きな精神的な意味合いを持たせるプーチン氏の姿勢と重要な関わりを持つとも受け止められていた。
ただ、キリル氏のプーチン氏寄りの立場はロシア正教会内での求心力低下にもつながっている。オランダ・アムステルダムのロシア正教会の教会は今年3月、キリル総主教との関係を断絶すると宣言。ウクライナ侵攻でロシアを非難する正教会の聖職者も増えている。
一方、欧州連合(EU)が提案したロシアに対する第6弾の制裁策の対象とする個人の中にキリル総主教が含まれていることが8日までにわかった。この制裁案の草案の全文書に目を通した2人の関係筋が明らかにした。
草案は関係各国の大使に検討を求めて送付された。ただ、EUの行政執行機関、欧州委員会筋によると、この段階では制裁対象の個人が除外されたり、加盟国の裁量で追加されたり場合もある。
欧州委員会のフォンデアライエン委員長は今月4日、ロシア産原油の輸入禁止を含む多くの制裁策を新たに提案していた。