ロシア側の発言の変化
地上戦が行き詰る中、ロシア当局者はウクライナ各都市の包囲には裏の目的があると主張している。その目的とは、ウクライナ軍の動きを封じて、分離派が支配するドンバス地方への兵力投入を防ぐことだという。
ロシア軍参謀本部のルドスコイ第1参謀次長は25日、ウクライナ各都市の制圧と軍事施設の破壊により「ウクライナ軍の動きを封じただけでなく、ドンバスでの軍備強化を妨げることが可能になる」と発言した。
プーチン大統領は2月24日に特別軍事作戦を公表した際に、ウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州からなるドンバス地域をウクライナの攻撃から守ることが目的だと述べた。
ルドスコイ氏もこの発言を繰り返すかのように、「作戦の第1段階の主な任務はおおむね完了した」と述べた。ロシア側がウクライナの都市襲撃を意図したことはないと強調し、都市襲撃の可能性は排除できないものの、「我が軍と資力は主要目的、つまりドンバスの完全解放に集中させる」と付け加えた。
だがルドスコイ氏はプーチン大統領のより野心的な目標、いわゆるウクライナの「非軍事化と非ナチ化」についても言及した。
手元の証拠からも、ロシア軍がドンバス周辺に進軍していることがうかがえる。だがロシア軍の大部分はマリウポリの過酷な包囲で身動きが取れない状態だ。マリウポリで被った損失により、南東部の他の地域への兵力投入にも支障が出るだろう。
戦争研究所は、ルドスコイ氏の発言は「ロシアが目的を縮小し、ドネツク、ルガンスク両州の支配に満足することを示している可能性もある。だが、こうした解釈は誤っている可能性が高い」と述べた。
「ウクライナ全土でロシア軍による大規模な攻撃作戦が見られないのは、ロシア政府が戦争目的の変更や東部への兵力集中を決断したというよりも、むしろロシア軍が攻撃を行う十分な戦闘能力を発揮できずにいる状況を表している可能性が高い」
ウクライナ軍司令部もやはり懐疑的なようで、現在ロシア軍は再編成と失った戦力の補充を強化しているとの見解を示している。
これらの全てが示唆しているのは、さらに多くの血が流れるとみられる戦争の第2幕が開けようとしているということだ。ロシア軍は巡航ミサイルや弾道ミサイルの使用を増やしながら、停滞する地上作戦の活性化を図ろうとしている。