ANALYSIS

欧州の小国リトアニア、台湾を巡り中国と渡り合う

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リトアニア首都に開設された台湾代表事務所に飾られる台湾とリトアニアの旗/Janis Laizans/Reuters

リトアニア首都に開設された台湾代表事務所に飾られる台湾とリトアニアの旗/Janis Laizans/Reuters

(CNN) 興味深い争いが東欧の小国リトアニアと中国の間でこの数カ月起きている。リトアニアは人口300万人弱、かたや中国は間もなく米国をしのぐ可能性がある経済を有する超大国だ。

すべては昨年始まった。リトアニアが数カ月の間に2回も中国の目を突いたのだ。

最初は、東欧や中欧の17カ国が中国との関係性を深める「17+1」と呼ばれるグループからリトアニアが脱退したことだった。その後リトアニアは他の構成国にも脱退を呼びかけた。中国は「一帯一路」と呼ばれるインフラプロジェクトをはじめ、この地域に数多くのビジネス上の権益を持っている。これを考えれば、中国にとって欧州からの反発はどんな形でも望ましいものではない。

次は昨年11月だ。リトアニアは欧州で初めて、台湾に「台湾」の名前で事実上の大使館を開くことを認めた。欧州や米国における同様の事務所は、台湾が首都とする「台北」の名を使い、中国からの独立を暗示する呼び名を避けてきた。台湾の外交部(外務省)はリトアニア首都ビリニュスでの台湾代表事務所の開設について、「台湾とリトアニアの新しい、前途ある道を開くことになる」と述べた。

中国はこの動きに怒りを示し、「一つの中国」原則を侮辱するものだと捉えている。一つの中国原則とは、台湾を独立した主権領域ではなく中国の一部と主張するものだが、内戦以降70年以上、中国と台湾は別々に統治されている。中国との外交関係を希望する国は、この原則を外交上認識する必要がある。

リトアニアは、新しい台湾の事務所は公式な外交的地位を持たず、一つの中国原則に反するものではないと説明する。だが、中国はすぐにリトアニアとの外交関係を格下げして応酬した。リトアニアは中国が自国へのリトアニア製品の流入を妨げ、実質的に貿易障壁を作り出していると主張している。中国政府はこうした主張を繰り返し否定し、中国の「核心的利益」を損ない、二国間関係を厳しい凍結状態に追い込んだのはリトアニアの方だと批判している。

こうした動きに対し、台湾は中国に輸出されるはずだったリトアニアの製品――ラム酒の瓶2万400本を含む――を買い上げ、中国からの圧力に直面するリトアニア支援のために同国の産業に数億ドルの投資をすると約束した。

この争いは欧州連合(EU)も巻き込む形となり、EUは加盟国のリトアニアを支持している。EUは中国によるリトアニアの扱いを、EUの他の加盟国への脅威とみなしてる。そうした各国の多くは中国とより深い経済的つながりがあり、それをさらに深化させたいと考えている。

1月27日には、EUは世界貿易機関(WTO)に中国を提訴。中国のリトアニアに対する差別的な貿易慣行を非難し、そうした慣行は欧州単一市場からの他の輸出品にも打撃を与えているとした。

WTOへの提訴は、EUの中国に対するより強硬な姿勢の始まりに過ぎない可能性がある。こうした行為が今後、中国からの貿易戦争という形の報復を招くのか、または中国の対欧州投資の中止という形で表れてくるのかはまだ定かではない。

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