天安門事件30年、消されゆく記憶 「恐怖」で次世代への継承進まず

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天安門事件30年、生存者が語る当時と現在

北京(CNN) 民主化を求めて集まった人々を中国軍が武力で鎮圧した天安門事件から、4日で30年となる。当事者として事件を目の当たりにした世代には成長した子どもを持つ人も多いが、自らの経験を語って聞かせるケースはまれだ。

現体制の批判につながる見解を伝えることは子どもにとって不利益になると考える親たちが口を閉ざすなか、天安門事件は国民全体の記憶の中から徐々に消え去りつつある。

1989年6月4日、中国軍は天安門広場で数週間にわたり続いていた民主化要求の抗議集会を実力行使で終了させた。参加した学生や労働者らに兵士が発砲し、死者数は数百人とも、数千人とも言われている。

当時29歳の工場作業員だったドン・シェンクンさんは、集会に加わったことで逮捕され、放火の罪で執行猶予期間付きの死刑判決を受けた。刑務所で過ごした17年の間に父親は亡くなり、妻とも離婚。人生が一変した。

ドンさんには現在33歳になる息子がいるが、天安門事件について話したことは一度もない。現在の中国の政治状況では、自身の過去の体験を知ることが息子にとってのリスクになりかねないからだ。

1989年、天安門事件で逮捕される以前のドン・シェンクンさん
1989年、天安門事件で逮捕される以前のドン・シェンクンさん

ドンさんは「息子の安全のためだ」「事件のことを話せば、彼の思想に影響を与えてしまうかもしれない」と危惧する。

同じく天安門事件を生き延び、政治犯として投獄されたファン・ツェンさんは、ドンさんの気持ちに理解を示す。事件で両脚を失ったファンさんによれば、かつての活動家の中にもわが子を政治から遠ざけたいと考える人がいる。「政権がすべての国民に不安と恐怖を植え付けた結果」だという。

「現在、共産党政権の支配の下で大半の人々は発言を控え、沈黙を守る。自分たちや子どものことを考え、やむを得ずそうする。選択の余地はない」(ファンさん)

中国の学校教科書には天安門事件の記述がなく、ネット上でも当局の厳しい検閲のために関連する記事や画像に触れることができない。共産党政権の主導により、事件についてほとんど知らない世代が作り出されたのだと、ドンさんは指摘する。

ドンさんの友人で、天安門事件で逮捕され17年投獄されたチャン・マオシャンさんも2人の娘に事件の話をするつもりはない。2人にとって「厄介なことになるだけ」だからだ。

ともに獄中生活を経験したドンさん(中央)ら3人は、今年2月に再会を果たした/CNN
ともに獄中生活を経験したドンさん(中央)ら3人は、今年2月に再会を果たした/CNN

「我々の暮らす社会は開かれてもいなければ安全でもない。娘たちには恐怖や不安を感じることなく育ってほしい」とチャンさんは話した。

親たちの懸念を裏付けるように、最近の中国では政治思想に基づき活動する学生が相次いで拘束されている。4月30日には、メーデーの休日に合わせて労働者と一緒に働くと宣言していたマルクス主義の大学生6人が消息を絶った。

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