AC130J「ゴーストライダー」に搭乗、米軍最大の航空砲を搭載 朝鮮半島上空
朝鮮半島に連なる山脈や尾根は他の場所では見られない風の状況を生み出し、これが時速1280キロ超で飛ぶ飛翔(ひしょう)体にも影響を与えるという。
カーティス氏やAC130の兵器制御エリアに座るもう一人の士官にとって、演習は韓国の友軍と共同訓練を行う機会にもなる。朝鮮半島で地上戦が勃発した場合、空中からこうした友軍を援護する必要性が出るかもしれない。
巨大なテレビモニターは、眼下の戦場を通常映像と赤外線映像の両方でクローズアップして映し出した。機外に取り付けられたカメラは射撃の正確性を確認するため、細部までズームすることが可能だ。
AC130Jの機体後方に見える105ミリ榴弾砲=6月上旬、韓国・烏山空軍基地/Brad Lendon/CNN
このガンシップに搭乗する任務指揮官のジャスティン・バリス少佐は、「AC130の特異な点はその火力と多種多様な弾薬の量、滞空時間だ」と説明する。
AC130Jは105ミリ榴弾砲に加え、30ミリ機関砲も搭載。主翼のパイロン(兵器搭載用のつり下げ装置)から精密誘導のミサイルや爆弾を発射することも可能だ。
こうした兵器はほぼピンポイントの正確性を誇る。叫び声が聞こえるほど友軍の近くにいる敵の陣地を攻撃できることから、一部ではAC130Jについて「歩兵の最良の友」との呼び声もある。
空中給油も可能で、理論上は搭乗員や弾薬が尽きない限り、連続滞空して地上部隊を支援することができる。
「幽霊」の歴史
米空軍のガンシップの起源はベトナム戦争にさかのぼる。当時、空軍はC47輸送機の側面から射撃を行おうと、7.62ミリ機関銃を設置した。
空軍の文書によると、この配置により、C47は1点を旋回しながら大量の火力を連続して浴びせることが可能に。機体に搭載された火砲から1分間に6000発を発射できた。
強力な火力や夜間任務で攻撃目標を照らすのに使用したフレアから、C47は「スプーキー(幽霊)」や「パフ・ザ・マジック・ドラゴン(魔法の竜パフ)」という異名も獲得した。
ベトナム戦争が進むと、空軍はさらに重い機体に目を向け、C130「ハーキュリーズ」に白羽の矢を立てた。
米国立空軍博物館によると、C130をAC130に改造した最初の機体は1967年、東南アジア上空で初めて戦闘任務に就いた。
空軍によると、近接戦闘部隊を支援する能力を持つAC130ガンシップには様々な派生形があり、グレナダやパナマ、ソマリア、イラク、アフガニスタンを含む各地の紛争に参戦して数え切れない人命を救ったという。
ただ、問題もある。2015年にアフガニスタン北部クンドゥズで「国境なき医師団(MSF)」の病院を攻撃した際には、患者や職員、管理人合わせて42人が死亡した。
恐るべき火力を搭載するAC130だが、低空を低速飛行するため、対空砲火の餌食になる。
空軍によると、これまでに失われたAC130は7機。最後に損耗が発生したのは1991年1月31日で、「砂漠の嵐」作戦のさなか、イラクの地対空ミサイルによりAC130Hが撃墜された。