米最高裁、気候変動と闘う環境保護局の権限抑える バイデン政権に衝撃

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米ユタ州にある石炭火力発電所/George Frey/Getty Images

米ユタ州にある石炭火力発電所/George Frey/Getty Images

(CNN) 米最高裁は6月30日、既存の発電所からの二酸化炭素(CO2)排出量を全般的に規制する環境保護局(EPA)の権限を制限する判断を下した。科学者が温暖化のペース加速に警鐘を鳴らす中、バイデン政権の脱炭素戦略に大きな打撃となる。

最高裁の判断は、いわゆる「主要な問題」の法理を発動する行政機関の権限全般を後退させるものとなる。気候政策の他の分野や、インターネット、労働安全に関する規制権限にも影響を与えることになる。

判決の衝撃は連邦政府全体を駆け巡り、明確な議会の授権がない行政機関の行為が脅かされる状況となっている。

判決は6対3で、ジョン・ロバーツ最高裁長官が多数意見を書いた。保守派判事6人が賛成し、リベラル派の3人が反対に回った。

ロバーツ氏は「法律が発電シフトの方法に基づき炭素排出量の上限を計画することをEPAに授権している」とのEPAの主張について、「我々の先例は懐疑的見方を促している」と言及。「先例の下では、これは主要な問題のケースとなる」「議会がこの機関にそのような決定権限を与えたと考える論拠はほとんどない」と述べた。

CNNの最高裁アナリストでテキサス大学ロースクール教授のスティーブ・ブラデック氏は、現代行政法に地殻変動を起こしうる判決だと指摘。100年にわたって連邦政府は議会が行政機関に広範な規制権限を授権できるという前提で機能してきたと述べ、「今日の判決は気候変動から食品安全基準に至るまで、あらゆる権限移譲に対する無数の訴訟に扉を開くものになる」との見方を示した。

ロバーツ氏はEPAについて、石炭の利用を遠ざける全国的な移行をもたらすレベルでCO2の排出上限を設定することは賢明な解決策だとしつつも、焦点の法律において「議会がEPAに、そのような規制計画を自ら採用していく権限を与えたというのは妥当でない」「これほどの規模や結果をもたらす決定権は議会そのものか、議会からの明確な授権に従って行動する機関に存在する」との見解を示した。

ニール・ゴーサッチ判事は、国民に説明がつかない行政機関の権限を裁判所は抑制していくとの意思を示した。近代国家での行政機関の重要性を認めつつ「我々の共和国の約束を捨て去りたいという人は誰もいない。国民とその代表者が、自分たちを統治する法律に実質的な発言権を持つべきだという約束だ」と述べた。

エレナ・ケーガン判事は反対意見の中で、地球温暖化への警鐘に言及した上で、今回の判断は「議会がEPAに『現代で最も切迫している環境問題』への対応のために授権した権限」を奪い去るものだと批判。「裁判所は気候政策の決定者として、議会でも専門の行政機関でもなく、自らを指名した」と断じた。

ホワイトハウスは30日、最高裁の決定を猛烈に批判した。「我々の国を後退させようとする破壊的な新たな判決だ」と述べた上で「バイデン大統領は公衆衛生を守り、気候変動危機に挑むため、法律で認められる権限行使を今後弱めることはない」と述べた。

ベセラ厚生長官は、国民の健康を損なう「公衆衛生上の災害」となる判決だと述べ、発電所を規制できなくなれば、ぜんそくや肺がんなど、汚染した空気に関連する病気の増加などにつながると指摘した。

動きそうにない議会

今回の判決で、温室効果ガス削減に向けた行動で議会に対する圧力が強まることになる。

だが、そのような大きな動きは議会で起きそうにない。民主党は気候やクリーンエネルギーの法案を巡って、法案に抵抗する自党のジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州選出)との交渉が数カ月にわたり膠着(こうちゃく)状態にある。

クリーンエネルギーへの大規模投資と、CO2排出削減に向けたEPAの強力な規制が共にそろわなければ、バイデン政権が気候変動対策の目標を達成できる見込みはほとんどないと専門家の分析は示している。

前述のブラデック氏は、議会の意思の欠如は連邦権限の後退につながると言及。「議会がこの判決に対応して、すべての授権についてより具体的なものに更新していく未来もありえるかもしれないが、我々も、裁判所も、それが起こらないことはわかっている」と述べた。

大気浄化法の範囲

裁判の焦点となったのは大気浄化法の条項のうち、発電所を規制するEPAの権限の範囲に関する箇所だ。

オバマ政権はこの条項を広く解釈し、州全体の規制を認めるものと位置付けた。一方トランプ政権はEPAの権限をより狭く捉え、EPAは個々の発電所の効率化を目的とする要件を対象にできるに過ぎないとした。

ワシントンの連邦控訴裁判所は昨年、トランプ政権の規制が法律の「基本的な誤解」に基づいていたとして無効にした。バイデン政権は新たな規制の制定を進めている。

現在発電所に関する有効なEPAの規制がないことから、裁判所ウォッチャーの間では最高裁が本件上訴を取り上げたことに驚きが広がった。

上訴したのは共和党が主導する州。ウェストバージニア州のモリシー司法長官が主な原告となり、10あまりの州の司法長官と石炭会社も参加している。

原告は発電所からの温室効果ガスを広範に規制するEPAの権限について、EPAから取り上げて議会に与えるべきだと主張。大気浄化法はそのような広範な権限を授権しておらず、主要な問題の法理にも触れた上で、このような広範な結果をもたらす決定権は議会の明確な授権が必要だと述べていた。

連邦政府を代理するプレロガー訟務長官は、発電所に対する有効な連邦政府の規制が現在ないことを理由に、訴訟の却下を求めていた。

決定を歓迎する共和党

モリシー氏は30日、「(最高裁が)選挙で選ばれていない官僚のEPAを抑制する、正しい判断を下した」「権限が正しい場所にもどったことを歓迎する。選挙で選ばれた、国民に奉仕する人々から構成される議会にだ」とコメントした。

同州のジャスティス知事(共和党)も判決を歓迎し、これにより「選挙で選ばれていないワシントンの官僚が、一方的に我々の経済を脱炭素化できなくなる」と語った。

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