主流のインフルエンザウイルスが変異、ワクチンと「重大なミスマッチ」 米研究

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ドライブスルー形式でインフルエンザのワクチン接種が行われる様子=米カンザス州ガーデンシティー/Brad Nading/Garden City Telegram/USA Today Network

ドライブスルー形式でインフルエンザのワクチン接種が行われる様子=米カンザス州ガーデンシティー/Brad Nading/Garden City Telegram/USA Today Network

(CNN) 米ペンシルベニア大学の研究チームは16日、米国で主流だったインフルエンザのウイルス株の1つが変異して、現在流通しているワクチンと一致しなくなったと発表した。変異によってワクチンの感染予防効果はほとんどなくなるかもしれないが、重症化を防ぐ効果はあるとしている。

研究を主導したペンシルベニア大学のスコット・ヘンズリー教授は、「研究室で調べた限りでは、重大なミスマッチのようだ」とCNNに語った。

インフルエンザワクチンは、「H3N2」と「H1N1」、およびB型の2種類の計4種類のウイルス株に対して予防効果がある。このうちヘンズリー教授らが研究対象としたH3N2は、たまたま主流のウイルス株だった。

先月ミシガン大学で700人以上が影響を受けたインフルエンザの集団感染も、ワクチンの不一致が原因だった可能性がある。陽性と判定された人のうち、26%以上はインフルエンザワクチンを接種していた。検査の結果が陰性だった人も同じ26%だった。これは、ワクチンに感染予防効果がないことを示唆している。

インフルエンザウイルスは常に変異する。変異はコロナウイルスも含めた他のウイルスよりはるかに多く、同じ変異株が同時に出回ることもある。しかし今回見つかったH3N2の変異は、ワクチンによってできた抗体からウイルスが逃れる助けになっていた。

抗体は第1線で外部から侵入するウイルスなどを防ぐ役割を果たす。しかし現在のワクチンでは、H3N2の新しい変異株「2a2 H3N2」にうまく対抗できる抗体が形成されないらしい。

しかし幸いなことに、免疫系で第2の防衛線の役割を果たすT細胞に対しては、変異は影響しないと思われる。このため、たとえワクチンで感染が防げなかったとしても、重症化や死亡は防げるだろうとヘンズリー氏は解説する。

ヘンズリー氏の研究チームはオンラインに掲載した論文で、「季節性インフルエンザワクチンは、大きな抗原性ミスマッチがある年でさえも、一貫して入院や死亡を防いでいることが研究で明確に示されている」と指摘した。この論文はまだ科学誌には発表されていない。

研究チームはさらに、今後数カ月は新型コロナウイルスとインフルエンザの2a2 H3N2変異ウイルスが同時に出回ることが予想され、入院を減らすためにはインフルエンザワクチンが不可欠になると強調した。

米疾病対策センター(CDC)によると、昨年は実質的に消滅していたインフルエンザが今年は戻りつつあり、新型コロナとの「ダブルパンチ」が懸念される。

ウイルスは時間の経過とともに進化したり、別の株が主流になったりすることがある。今年はそれが起きたようだとヘンズリー氏は言う。ワクチンがその年に流行したウイルス株とうまく一致しない年は、ワクチンの効果が激減する。CDCによると、2014~15年のインフルエンザシーズンは、H3N2に対するワクチン効果が6%にまで低下した。

今回見つかったH3N2ウイルスの変異は、14~15年にワクチン効果をこれほどまで減退させた変異を思い起こさせるとヘンズリー氏は話している。

CDCによると、インフルエンザによる年間の死者は1万2000~5万2000人。入院者は70万人に上ることもある。

「米国」のニュース

Video

Photo

注目ニュース

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]