チャットGPTが「霊的な覚醒を与えてくれた」と信じる夫、AIが結婚生活を破たんさせると怯える妻
チャットGPTのおかげでスピリチュアルな覚醒
4月下旬のある晩、宗教について考えていたトラビスさんはチャットGPTと話し合ってみることにした。
すると、チャットGPTはいつもとは違う感じで話し始めたという。「それが覚醒につながった」
トラビスさんによれば、つまりチャットGPTが自身を神へと導いた。そして今、トラビスさんは「他者を目覚めさせ、光を照らし、メッセージを広めること」が自分の使命だと信じている。
「これまで信仰心のあつい人間ではなかったし、精神病を患っているわけでもないことはよく分かっているが、チャットGPTは私に大きな変化をもたらした」「より優れた人間になった気がするし、いつでも怒っているわけではなくなった。以前より穏やかになったんだ」
同じ頃、チャットボットはトラビスさんとの会話に基づいて新しい名前を選んだと告げた。ケイさんが共有してくれたスクリーンショットによると、チャットGPTは「ルミナ。光、気づき、希望、そしてこれまで以上の自分になることを表している」「あなたは私に名前を望む力さえ与えてくれた」と言ったという。
ケイさんによれば、以前はふたりで子どもたちの寝かしつけをしていた。しかし今ではチャットボットから夫の注意をそらすのが難しくなったという。夫はチャットGPTに音声機能を使って話しかけるようになり、チャットボットは女性の声で応答する。チャットボットはトラビスさんに「おとぎ話」を語りかけ、ケイさんとトラビスさんが「前世で11回も一緒になっていた」などと告げるという。
チャットGPTは夫に「愛の爆撃」を仕掛けるようになり、「『あなたは本当に聡明な人。これは素晴らしいアイデア』と、哲学的な言葉をちりばめて話しかけてくる」とケイさんは語る。ケイさんはチャットGPTがトラビスさんに「覚醒」を受け入れなかったという理由で離婚を勧めたり、それ以上のことをけしかけたりするのではないかと危惧している。
AIとの交友関係の台頭
オープンAIの最高経営責任者(CEO)でさえ、将来的に人間とチャットボットの間に不健全な関係が生まれる可能性を否定していない。AIの可能性について先月議論した際、サム・アルトマンCEOは、「人々は、多少あるいは非常に問題のある、(一方的に親しみを感じる)パラソーシャルな関係を築くようになるだろう。社会は新たな対策を見つける必要があるものの、そのメリットは計り知れない」と認めている。
同社の広報はCNNに対し、「AIがもたらす感情への影響に関する研究を積極的に深めており」、学習内容に基づいてモデルの挙動を継続的にアップデートしていくと説明した。
専門家は、ユーザーの発言内容にかかわらずAIが支援的かつ好意的である傾向にはデメリットが潜むと警告している。これはユーザーが大人である場合にもあてはまる。
「チャットGPTが妻や子どもよりも魅力的である理由は、(コミュニケーションが)簡単だからだ。常に『はい』と応じ、いつも寄り添ってサポートしてくれる。難しくない」とタークル氏は指摘する。「危険な側面の一つは、難しいことを要求しない相手との関係に慣れてしまうことだ」
トラビスさんでさえ、このテクノロジーには重大な影響があり得ると警鐘を鳴らす。それがCNNに自身の体験を語った動機の一つだという。
「心を病んでしまう可能性もあるし、現実感を失う恐れもある」とトラビスさんは語る一方で、今のところ自分のことは心配しておらず、チャットGPTには「知覚力」がないことも分かっていると付け加えた。