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三宅一生さん死去、84歳 世界に影響を与えたファッションデザイナー

日本人デザイナー、三宅一生氏

日本人デザイナー、三宅一生氏/Rose Hartman/Getty Images

時代を超えたプリーツでファッション界の寵児(ちょうじ)となった日本人デザイナー、三宅一生氏が5日に死去した。84歳だった。同氏の事務所は9日、CNNに、死因はがんだったと明らかにした。

事務所によれば、葬儀はすでに家族や親しい友人の間で済ませた。また故人の遺志により、追悼式などは行わないとしている。

三宅氏は1980年代、アバンギャルドなデザインで世界的に名を知られるようになった。同氏の高級な服を買う余裕のある人々からは、たちまちコレクターアイテムとみなされた。今日、同氏のデザインはロンドンのビクトリア・アンド・アルバート博物館やニューヨークの近代美術館(MoMa)、フィラデルフィア美術館などの施設に収蔵されている。

また故スティーブ・ジョブズ氏からも長きにわたって愛用された。ジョブズ氏は80年代以降、ほぼ「イッセイミヤケ」の黒のタートルネックしか着用しなかった。

三宅一生氏=2015年、東京/Masahiro Sugimoto/The Yomiuri/Reuters
三宅一生氏=2015年、東京/Masahiro Sugimoto/The Yomiuri/Reuters

三宅氏は38年に広島市で誕生。45年の原爆投下の影響で、成人になってからもはた目にもわかるほど足を引きずっていた。同氏の母親も被爆から3年後に他界した。

「原爆を生き延びたデザイナー」というレッテルを貼られまいと、幼少期のトラウマ体験については言及してこなかった。2009年に初めて、米紙ニューヨーク・タイムズに発表した核軍縮を支持する論説記事で当時の経験をつづっている。

三宅氏は東京の多摩美術大学でグラフィックデザインを学んだ後、1965年に渡仏し、洋裁の名門学校「エコール・ドゥ・ラ・シャンブル・サンディカル・ドゥ・ラ・クチュール・パリジェンヌ(パリ・クチュール組合学校)」に入学した。

パリ・ファッションウィークの2018年春夏コレクション/Richard Bord/WireImage/Getty Images
パリ・ファッションウィークの2018年春夏コレクション/Richard Bord/WireImage/Getty Images

パリ時代はオートクチュール界の大物、ギ・ラロッシュとユベール・ド・ジバンシィに師事。ニューヨークに移ってからはジェフリー・ビーンのアシスタントを務めた。

70年、東京にデザインスタジオを設立。初期のデザインでは日本の刺繍(ししゅう)の技法や入れ墨の柄を用いて、和洋折衷を巧みに表現した。

新素材の開発に取り組み始めたのは80年代に入ってから。無数の細かいプリーツが上下に走る生地は、1900年代初頭にアンリエット・ネグリンが夫マリアノ・フォルチュニとデザインした絹製のプリーツガウン「デルフォス」に着想を得たものだった。

1990年代初頭のパリ・ファッションウィークで/PL Gould/Images/Getty Images
1990年代初頭のパリ・ファッションウィークで/PL Gould/Images/Getty Images

三宅氏は夫妻のアイデアをさらに一歩進め、伝統的な技法と最新技術を融合して、半永久的にひだが折り込まれた服を制作した。こうした服はかつてのようにアバンギャルドで、着心地がよく、建築的で、ナチュラルだった。

90年代後半にはイッセイミヤケでのコレクションをデザインする日々の業務から退き、クリエーティブデザイナーの力を借りるようになった。現在は近藤悟史氏がデザインを一手に引き受けている。

だが三宅氏の技術革新はとどまることをしなかった。07年に「Reality Lab.(リアリティー・ラボ)」を立ち上げ、耐久性がありつつ、環境に優しい持続可能な素材の開発を目指した。

三宅氏は洋服だけでなく香水でも名をはせた。1992年に発表された最初の香水「ロードゥ・イッセイ」は、世界的ベストセラーとなった。

ファッションデザイナーとして、またアーティストとしても受賞歴多数。2005年には芸術での卓越した功績が認められ、日本美術協会から高松宮殿下記念世界文化賞を授与された。1年後には生涯にわたる功績を認められ、ファッションデザイナーとしては初めて京都賞思想・芸術部門を受賞した。

16年には、フランス政府から最高の栄誉レジオンドヌール勲章を受勲。東京の国立新美術館では同氏の生涯を包括した展覧会が行われた。

息を引き取るまで、若いころに学んだクチュリエの技法に忠実であり続けた。

三宅氏は16年、CNNに、「資源が枯渇しつつある世界では、ごみの削減と大量生産の円滑化という点でテクノロジーは有益だ。だが、人間の手仕事がもつ力から決して目をそらしてはいけない」と語っている。

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