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ギリシャ首相、英首相との会談中止に「当惑」 大英博物館の彫刻めぐる問題で

ギリシャのミツォタキス首相はパルテノン神殿の彫刻群に対する自身の立場は「よく知られている」と説明

ギリシャのミツォタキス首相はパルテノン神殿の彫刻群に対する自身の立場は「よく知られている」と説明/Mike Kemp/In Pictures/Getty Images

(CNN) スナク英首相は、ギリシャのミツォタキス首相が大英博物館に所蔵されているギリシャ・パルテノン神殿の彫刻群「エルギン・マーブル」についてテレビで発言した内容を理由に、同氏との会談を直前になって中止した。これに対し、ミツォタキス氏は「当惑している」と述べた。

ミツォタキス氏は先週末から英国を訪問中。28日に予定していたスナク氏の会談が、突然中止になった。

ミツォタキス氏は27日、首相府を通した声明で「英首相が予定の会談を数時間前に中止したことに当惑している」とコメント。さらに「ギリシャと英国は伝統的な友好関係で結ばれている」とし、大英博物館所蔵のエルギン・マーブルをめぐるギリシャの立場は「よく知られている」とも付け加えた。

そのうえで、「自分の見解が正しく公正だと確信していれば、反対意見を恐れないものだ」と述べた。

エルギン・マーブルは19世紀初め、英国のオスマン帝国駐在大使だったエルギン卿が、アテネのパルテノン神殿から持ち帰った彫刻群。ギリシャはこれまで繰り返し返還を求めてきた。

ロンドンの大英博物館でギリシャ・パルテノン神殿の彫刻群「エルギン・マーブル」を見る来館者/Daniel Leal/AFP/Getty Images/File
ロンドンの大英博物館でギリシャ・パルテノン神殿の彫刻群「エルギン・マーブル」を見る来館者/Daniel Leal/AFP/Getty Images/File

ミツォタキス氏は27日、英BBC放送とのインタビューで、彫刻群は「要するに盗まれた」と語り、ギリシャ政府としては合意を目指す働き掛けと、英国との「パートナーシップ」に向けた努力を続けると表明した。

「所有権に疑問がある芸術品の返還問題ではない。私たちは彫刻群がギリシャのもので、要するに盗まれたととらえている」と述べた。

「論点は分割されたものをひとつに戻すこと、本来ひとつの建造物である作品の真価が最大に感じられる場所はどこかということだ。名画モナ・リザを半分に切って、一方をルーブル美術館、もう一方を大英博物館に置くことを想定してもらうようなものだ」とも主張した。

スナク氏の報道官は28日の記者会見で、ギリシャ政府が今回の訪問について、エルギン・マーブルの所有権問題を公に取り上げる場として利用しないことを事前に約束していたと指摘。その約束が破られたために会談は中止されたと説明した。

一方、ギリシャ政府の当局者は28日、この問題を公の場で取り上げないという約束はしていないと主張した。

ギリシャ首相府によると、ミツォタキス氏はスナク氏との会談で、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突、気候変動など、幅広い話題について協議したいと考えていた。

ギリシャ政府の報道官、パブロス・マリナキス氏は28日、会談を中止するという行動には「敬意がみられない」と非難。同国の野党、急進左派連合(SYRIZA)と全ギリシャ社会主義運動(PASOK)も、中止の決定は「無礼」で「承服できない」と述べ、彫刻群の件は「国益の問題」だとの認識を示した。

英首相府は両国の関係を「きわめて重要」と表現し、ダウデン副首相がミツォタキス氏との会談に臨めると伝えた。ミツォタキス氏はすでに帰途に就いている。ギリシャ当局者がCNNに語ったところによると、ダウデン氏とは会わないことにしたという。

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