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所有者から「忘れられた」フラゴナールの絵、10億円で落札 仏

仏画家フラゴナールの作品と判明した絵画が10億円で落札された。

仏画家フラゴナールの作品と判明した絵画が10億円で落札された。/Stephane De Sakutin/AFP/Getty Images

同じ一族のもとで数世代にわたって保管されていた「忘れられた」絵画が競売にかけられ、768万ユーロ(約10億円)で落札された。この絵は専門家の鑑定の結果、フランスの画家ジャン・オノレ・フラゴナールの作品と判明していた。

作品名は「読書する哲学者」。仏北東部エペルネーの競売会社アンシェール・シャンパーニュに所属する競売人アントワーヌ・プティ氏が、遺産鑑定の依頼で同町近郊のアパートに呼ばれた際に見つけた。同氏が29日、CNNに明らかにした。

縦45.8センチ、横57センチの絵は、ほこりに覆われた状態で壁の高い位置にかけられていた。

「美しい絵だと思った」とプティ氏は振り返る。

壁から降ろして詳しく調べたところ、絵の後ろには黒いインクで「フラゴナール」と書かれていた。

所有者の一族は絵のことを遺言に盛り込むこともないまま、数世代にわたって家族で所有し続けていた。プティ氏は絵を受け取ると、絵画の専門家で構成されるパリの会社キャビネ・テュルカンに鑑定に出した。

「私自身では絶対の確信は持てなかった」とプティ氏。キャビネ・テュルカンのチームによって本物のフラゴナール作品と確認されたと言い添えた。

キャビネ・テュルカンのステファヌ・ピンタ氏は同社作成の競売カタログで、「画布はほこりや黄色のワニスで覆われているものの、彼の絵の力は一目瞭然だ」と説明している。

フラゴナール作「読書する哲学者」。制作年代は1768年~70年とされる/Stephane De Sakutin/AFP/Getty Images
フラゴナール作「読書する哲学者」。制作年代は1768年~70年とされる/Stephane De Sakutin/AFP/Getty Images

カタログによれば、「この絵は世代から世代へと受け継がれてきたが、時間の経過とともに誰の作品か忘れられた」という。

フラゴナールは1732年から1806年まで生き、18世紀を象徴する画家の一人と考えられている。

楕円(だえん)形の油彩キャンバス画には、白髪の男性が本をのぞき込む様子が描かれている。プティ氏によると、制作年代は1768年~70年。

この時期のフラゴナールは徒弟修行を終え、顧客の注文ではなく何でも好きな題材を描いていた。

同じ頃、フラゴナールは想像上の人物の肖像も描いており、競売カタログによると、「今回の絵はその最初期の例である可能性が高い」。

絵は200年以上にわたって同じ一族が所有していて、触られたり動かされたりした形跡はほとんどないとキャビネ・テュルカンは指摘し、「目覚ましい保存状態」だとしている。

所有者には絵の価値は見当もつかなかったものの、熱心な入札者が最終落札額を当初推定の150万~200万ユーロから押し上げた。

10年前であれば、ここまでの額には到底届かなかったとみられるが、現在はこの種の作品が流行しているといい、プティ氏は「お望みなら星の巡り合わせと言ってもいい」と話している。

プティ氏は落札者の氏名については公表を控えた。

今回の話は、16世紀オランダの巨匠オットー・ファン・フェーン(1556年生まれ、1629年没)の長年行方不明になっていた絵が2016年、アイオワ州のクローゼットで見つかったというエピソードをほうふつさせる。

この薄汚れた木製パネルの油彩画には、神話上の人物の裸体が描かれていた。同州デモインにある複合芸術施設「ホイト・シャーマン・プレイス」の責任者、ロバート・ウォレン氏にはそれほど価値のあるものには見えなかったが、調査の結果、評価額は数百万ドルに上る可能性が高いことが判明した。

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