Architecture

プリツカー賞受賞の英建築家、リチャード・ロジャース氏が死去 88歳

パリのポンピドゥーセンターの前に立つ建築家、リチャード・ロジャース氏

パリのポンピドゥーセンターの前に立つ建築家、リチャード・ロジャース氏/Martin Bureau/AFP/Getty Images

パリのポンピドゥーセンターやニューヨークの3ワールドトレードセンター、ロンドンのミレニアムドームなどを手掛け、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞した建築家、リチャード・ロジャース氏が死去した。88歳だった。18日夜、「穏やかに息を引き取った」と、代理人を務めるフロイト・コミュニケーションズのマシュー・フロイト氏がCNNに確認した。

ロジャース氏は同世代で最も特徴的な建築家の一人だった。その建築スタイルは一目で識別でき、高度な順応性も有していた。

1933年、伊フィレンツェの英国系イタリア人の家庭に生まれた。家族は39年に英国に移住。ロンドンの英国建築協会付属建築学校(AAスクール)に在籍した後は米イエール大学で学び、同じく学生だった英建築家のノーマン・フォスター氏と親しくなる。卒業後の63年、2人は当時のロジャース氏の妻、スー・ロジャース氏、64年にフォスター氏と結婚するウェンディ・チーズマン氏の2人とともに「チーム4」という建築事務所を立ち上げた。

4人が一緒に仕事をしていたのはわずか4年だが、その間英国建築界に確かな足跡を残し、同国におけるハイテク志向の建築スタイルの第一人者として名が知られるようになった。

19日にはロジャース氏の死去を悼む声が多数寄せられた。フォスター氏はインスタグラムのコメントで、ロジャース氏を自身にとって「最も長い時を過ごし、最も近しい友」と呼び、「寂しくてたまらない」とつづった。

米紙ニューヨーク・タイムズの建築評論家、マイケル・キンメルマン氏はツイッターで、「素晴らしい人間性と活力、視覚的才能を持った建築家。巨匠の一人で、とりわけ市民社会に深く貢献し、街に活気をもたらした」と称えた。

伊建築家のレンツォ・ピアノ氏と組んだロジャース氏は、77年のパリ・ポンピドゥーセンターの完成によってその名を不動のものにした。初公開時には非常に物議をかもした同センターだが、以降はパリで最もよく知られたランドマークの一つとなった。従来の美術館が持つ古典的な趣とは一線を画すハイテク志向のスタイルで、梁(はり)や配管といった設備がそのまま外観を構成しているのが特徴だ。下水管やエレベーターも建物の外側に位置し、内部のスペースを最大化する設計になっている。

86年、リチャード・ロジャース・パートナーシップとして活動していたロジャース氏は、もう一つの有名な建築物を同様のスタイルで完成させることになる。英保険会社ロイズのロンドン本社ビルがそれだ。この建物も最初は厳しい批判にさらされたが、今ではロンドンを代表する建築物の一つになった。2011年には、英国指定建造物の1級に指定されている。現代建築で英国建築界最大の栄誉となるこの指定を受けている例はごくわずかしかない。

2016年にはCNN Styleの客員編集者を務めた
2016年にはCNN Styleの客員編集者を務めた

07年、ロジャース氏の事務所はロジャース・スターク・ハーバー+パートナーズに名称を改めた。仲間の建築家、グレアム・スターク氏とイヴァン・ハーバー氏の貢献を反映した改名だった。以来、同事務所は世界中の都市にその印象を刻み続けている。前衛的なデザインを施したそれらのビルにはニューヨークの3ワールドトレードセンター、仏ストラスブールの欧州人権裁判所、ロンドンのミレニアムドームが含まれる。

19日の声明で、ロジャース・スターク・ハーバー+パートナーズは、自分たちの元同僚を「社交的で、どんな時も地位には全くとらわれず、常に他者を受け入れ、探求心旺盛。将来を見据えていた」と評した。

さらに「とてつもない意欲とカリスマを備えた人間で、同じくらい礼儀正しく、誠実だった。芸術であり科学でもある建築に打ち込み、都会性、都市の生活、政治参加、前向きな社会変革にも熱心だった」と付け加えた。

ロジャース氏の事務所は06年、スペイン・マドリードにあるバラハス国際空港の第4ターミナルで王立英国建築家協会のスターリング賞を受賞。09年にも、ロンドンのがん治療施設、マギーズセンターで再び同賞に輝いた。

ロジャース氏自身は07年にプリツカー賞も受賞している。

1991年、英エリザベス女王によって騎士に叙せられ、96年にはリバーサイド男爵の名で一代貴族の身分も取得した。

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