ボクシング女子、46秒で棄権のイタリア人選手が対戦相手に謝罪 パリ五輪
スポーツにおける性別検査に対しては、これまで複数の団体が厳しい目を向けてきた。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、こうした検査がプライバシーや尊厳に絡む基本的な権利を侵害していると主張する。
性分化疾患(DSD)を抱える女子選手は、しばしばそのような検査の対象となる(ケリフ選手は自身がDSDだとは述べていない)。
DSDは遺伝子やホルモン、生殖器官に関連する一連の症状で、生まれつき他の女性よりテストステロンが多く分泌される体質が関係する場合もある。DSDの特徴は第二次性徴を迎える思春期にならなくては現れない。
どれだけの人々がDSDの特徴を備えているのか推定するのは困難だ。自分がDSDであるのを知らないまま一生を過ごす人も多い。科学者らは50人に1人はDSDの特徴と共に生まれると推計する。DSDの特徴を持って生まれた人は、あらゆる性自認を有する可能性がある。
パリ五輪に先立ち、IOCはDSDを抱える選手について新たな規則を導入。そのようなケースに対しても包摂性を既定方針とするべきであるとした。またDSDを抱える選手が女子の競技から除外されるのは、公平性と安全性に明確な問題が生じる場合のみとすべきとも定めている。
IOCは2日、ボクシング競技に臨む全選手は「大会への出場資格と参加規定を順守している」と改めて強調。「該当する医療上の規定も守っている」とした。
それでもアダムス報道官は、検査及び競技の公平性、安全性を巡って浮上した懸念について理解していると表明。自分たちが決定を下す手法について、白黒はっきりつけられる説明は現時点で科学界にも存在していないと認めた。
一方で競技者の中には、ケリフ選手を支持する声も多い。2022年の世界選手権でケリフ選手を破ったアイルランドのエイミー・ブロードハースト選手はX(旧ツイッター)に2人の画像を投稿。「憎悪感情を抱くのはばかげている」とのメッセージを書き込んだ。
またアルジェリア五輪委員会は、「彼女(ケリフ選手)の人格と尊厳に対するこのような攻撃は著しく公平さを欠く。とりわけ本人が五輪でキャリアの頂点を目指している中では不当なものだ」と批判した。