OPINION

トランプ氏、消えぬプーチン氏への執着 ウクライナ侵攻後も変わらず

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2017年のAPEC首脳会議で言葉を交わす当時のトランプ大統領(左)とプーチン氏/MIKHAIL KLIMENTYEV/AFP/SPUTNIK/AFP via Getty Images

2017年のAPEC首脳会議で言葉を交わす当時のトランプ大統領(左)とプーチン氏/MIKHAIL KLIMENTYEV/AFP/SPUTNIK/AFP via Getty Images

(CNN) 米国のトランプ前大統領は、苦し紛れの上にひどく見慣れた戦術に訴え、バイデン大統領に痛手を与えようと努めている。ロシアのプーチン大統領に協力を求めることで、それを果たそうとしている。

見たところトランプ氏は全く変わっていない。むしろ深みにはまる一方で、ますます行き着くところまで行き、目に余るその無神経さによって政治の世界で相手にされなくなる可能性もある。

ジャストザニュースとのインタビューで、同氏はバイデン氏の息子のハンター氏がロシアで結んだ商取引に関する立証されていない主張を強調。プーチン氏に対し、事態について把握している可能性のあるあらゆる情報を公表するよう強く求めた。そうした情報にロシア政府がアクセスできるのかどうか、全く明らかでないにもかかわらず。

ロシアに助けを求めつつ政敵を攻撃するのは、トランプ氏によるおなじみの戦略だ。2019年にも、バイデン氏の息子にまつわるスキャンダルをでっち上げようとして失敗した。ただ当時と違い、今回プーチン氏は世界中から悪口雑言(ぞうごん)を浴びる状況にある。全土を焼け野原にしかねない激しさで、ウクライナを侵攻しているのが原因だ。

トランプ氏にとってこれ以上ないほど悪いタイミングで、我々は同氏が数年にわたりこのクレムリン(ロシア大統領府)の長にすり寄ってきたのを思い起す。一方で米国の同盟国や諜報(ちょうほう)機関とは距離を置いていたことにも改めて気が付く。同氏が今回打ち出した誤情報プロジェクトの標的は、以前と同様バイデン氏父子だ。プロジェクトには長年のトランプ氏の盟友、プーチン氏も絡むが、バイデン氏は最近プーチン氏を「戦争犯罪人」、「虐殺者」と呼んでいた。

一連の茶番劇からは、前回19年7月のスキャンダルを思い出さずにいられない。当時トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領に圧力をかけ、大統領選の候補者だったバイデン氏と息子のハンター氏の捜査を行わせようとした。

ゼレンスキー氏への要請にはいかなる「交換条件」もなかったと述べたトランプ氏だったが、実際には約束していた軍事援助の実施を遅らせた。この時ウクライナは、東部地域の親ロシア派分離主義勢力と紛争中で、そうした援助を必要としていた。

今回トランプ氏がプーチン氏に対して発したジャストザニュースでのコメントは、ジャーナリストのジョン・ソロモン氏が報じた。ソロモン氏は19年の策略でも重要な役割を果たしている。政治専門紙ザ・ヒルでの自身のプラットフォームを使い、外国勢力を利用してハンター・バイデン氏を誹謗(ひぼう)中傷しようとするトランプ氏の取り組みを盛り立てたのだ。

かつて果たした役割を繰り返す形で、トランプ氏の新たな反バイデン計画の発信を担うソロモン氏。この図式からも、トランプ氏が講じているのが自身の元来の常套(じょうとう)手段であるのがよく分かる。

前大統領が現状これほどリスクのある行動を取るのには、一体どんな理由があるのか? ことによると同氏は世間の注目に飢えているあまり、それを得るためなら何でもするつもりなのかもしれない。しかしもっと可能性が高いのは、ニュースメディアの注意をそらす狙いだ。現在こうしたメディアはトランプ氏と裁判所のいざこざや、連邦議会議事堂襲撃事件を調査する委員会との対立の悪化に焦点を当てている。

米紙ワシントン・ポストとCBSニュースが先週、報じたところによれば、襲撃事件のあった昨年1月6日のホワイトハウスの通話履歴には7時間を超える空白のあることが公式記録から分かったという。空白はトランプ氏の通話を記録した部分とみられるため、何者かが襲撃事件当日の同氏の行動に関する証拠を隠そうとした可能性が示唆される(トランプ氏の広報担当者は、ポスト紙とCBSニュースの取材に対し、前大統領がホワイトハウスの記録の保管にかかわってはいなかったと説明。本人の通話はすべて保存されているはずだとの認識を示した)。

CNNが以前報じたように、トランプ氏は襲撃事件の間、トミー・タバービル上院議員(アラバマ州)、マイク・リー上院議員(ユタ州)、ケビン・マッカーシー下院院内総務に電話をかけている。いずれの通話も、共有されたホワイトハウスの記録には存在していない。

疑わしい記録の空白についてのニュースに加え、トランプ氏には先週、裁判所からも不快な知らせがもたらされた。

カリフォルニア州で議事堂襲撃事件に関する訴訟を審理した判事が、トランプ氏について、議会での選挙結果の認証を妨害する罪を犯した可能性が「そうでない可能性よりも高い」と明言した。また認証を阻止しようとしたトランプ氏のチームの取り組みは、「(選挙結果を覆す)法理論を求めるクーデター」の性質を帯びているとも述べた。選挙ではバイデン氏が勝利した。

さらに、先週は別の進展もあった。ニューヨーク州の判事がトランプ氏一族の中核企業「トランプ・オーガニゼーション」に対し、これ以上引き延ばさずに民事事件の捜査で必要な文書を公開するよう求めた。この捜査は州の検事総長が主導している。

その政治人生を通じ、トランプ氏は影響力を高めようとする手段の一環としてニュースの話題の中心を占め、自身を従来の慣例に逆らうことのできる存在だと誇示してきた。「5番街の真ん中に立ち、誰かを撃ったとしてもなお、私の票が減ることはないだろう」。そのように語ったこともあった。

今や米国民はロシアに対抗することでほぼ団結している。そうした中プーチン氏に言い寄り、またしても反バイデン氏の策略を展開するトランプ氏の判断が妥当なものとは思えない。ここでどうしても気になるのが、さすがに今回こそはトランプ氏も持ち前の影響力を失い始めるのかどうかという点だ。これまでがっちりつかんで離さなかった忠実な支持基盤にほころびが生まれてくるのかどうか、考えずにはいられない。

マイケル・ダントニオ氏はトランプ氏の評伝「Never Enough: Donald Trump and the Pursuit of Success」の著者。またトランプ氏の弾劾(だんがい)を扱った「High Crimes: The Corruption, Impunity, and Impeach」はピーター・アイズナー氏との共著。記事の内容は同氏個人の見解です。

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