(CNN) 米国を出航したクルーズ船少なくとも4隻が、船内で新型コロナウイルスの陽性者が確認されたことを受け、この1週間で相次ぎ予定していた寄港地の入港を拒まれたり乗客が下船できなくなったりしている。
米国を拠点とするクルーズ船は、ワクチン接種義務付けなどの対策を徹底した上でこの夏から運航を再開しているが、感染力の強い「オミクロン株」が米国などで猛威を振るう中、日程変更を強いられるクルーズ船が増えている。
メキシコ中部ハリスコ州保健局によると、ホーランド・アメリカ・ライン社が運航する「コーニングスダム」は、乗員21人が新型コロナ検査で陽性となり、当局は23日、同州プエルトバジャルタでコーニングスダムの乗客が下船することを禁止した。
ホーランド・アメリカ・ラインはCNNの取材に対し、「ワクチン接種を完了していた少数の乗員」に陽性反応が出たと説明。全員が軽症か無症状だとしている。
ハリスコ州は当初、陰性者の下船は許可する方針だったが、感染が確認された乗員が23日までに急増したことから方針を変更。わずか1週間前まで陽性と判定された乗員は1人だけだった。
ホーランド・アメリカ・ラインなどクルーズ船を運航する各社は、子どもを除く乗客乗員全員に対して新型コロナのワクチン接種完了を義務付けている。
カーニバル社が運航する「カーニバル・フリーダム」は、「少数の」(同社)乗船者が陽性と判定されたため22~23日にかけてカリブ海のボネール島とアルバ島に入港を拒否され、代替として24日にドミニカ共和国に寄港することになった。同船は予定通り、26日にフロリダ州マイアミに帰港した。
乗客のジム・ストロプスキさんはCNN提携局WPLGの取材に対し、快適な船旅だったと振り返り、カーニバル社の対応を評価した。妻のコニーさんも同社のコロナ安全対策を称賛。夫妻は2週間後にまたカーニバルのクルーズ船に乗ることを予定している。
一方で、今回のクルーズを「ひどかった」と振り返る乗客もいる。リー・マリーさんは、乗船者の新型コロナの症例について「私たちにはほとんど何も教えてくれなかった。みんなに好きなようにさせていた」と振り返り、同社のコロナ安全対策は「とても無責任」だったと批判した。
米紙マイアミ・ヘラルドの22日の報道によると、ロイヤル・カリビアン社が運航する「オデッセイ・オブ・ザ・シーズ」は、ワクチン接種を完了していた乗客乗員55人が新型コロナに感染し、キュラソー島とアルバ島に入国を拒否された。
南米コロンビアの当局は22日、同国カルタヘナに入港したクルーズ船「セブンシーズ・マリナー」の乗客乗員の下船を認めなかった。乗員6人と乗客1人の陽性が報告されたことを受けた措置。同船は18日、マイアミから米カリフォルニア州サンフランシスコに向け18日間のクルーズに出発していた。
ロイヤル・カリビアンのクルーズ船は、「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」でも乗船者少なくとも48人が陽性と判定されたことを、同船が18日にマイアミに帰港した後に運航会社が明らかにした。乗客乗員6000人以上が乗った同船は、少なくとも3島に寄港していた。日程の混乱は報告されていない。
カリブ海やメキシコ湾などでは今も数十隻のクルーズ船が航行中で、予定の変更を強いられたのはごく一部にすぎない。
船内で陽性者が出るのは今月に限った現象ではなく、米国を出発するクルーズがこの夏に再開されて以来、別の船でも起きていた。
例えば8月にはカーニバル社のクルーズ船で、中米ベリーズ寄港を前に乗船者27人が陽性と判定された。それでも陽性者は船内で隔離され、残る乗客らは陰性証明書の提示を条件として、ベリーズでの下船を認められた。
ただ、オミクロン株の感染が拡大する中で、カーニバルの広報は24日、「たとえ少ない症例数であっても、我々の厳格な手順にのっとって管理していたとしても、当局の見方が変わる寄港地もあるかもしれない」と説明している。