(CNN) 車内に笑い声や歓声を響かせて、待ちに待った遠足を楽しむ子どもたち――。イエメン北部のサアダで今月9日、空爆に遭ったスクールバスでの様子を、男子生徒の1人が撮影していた。数十人のクラスメートとともに、この生徒も死亡した。
赤ペンを片手に出席を取ろうとする声が、大勢のおしゃべりにかき消される。見送りの親たちが窓の外から手を振った。
バスではしゃぐのは6~11歳とされる少年たち。2カ月間の夏期宗教教室に参加し、締めくくりの遠足に出かけていた。
一行は反体制派の墓地に向かった。教師のヤヒヤ・フセインさん(40)は、「ここではほとんどの公園や庭園が戦争で破壊されてしまった」と話す。緑が残っているのは寺院や墓地ばかりだ。
ビデオの中で、イスラム教の聖典コーランの暗唱を終えた生徒たちがバスから飛び降り、墓地で追いかけっこを始めた。撮影した生徒が「待って! 写真を撮ろう」と呼び掛ける声も入っている。
この後、生徒たちがバスに戻ったところで悲劇は起きた。遠足に遅れて合流したフセインさんは、近くに車を止めようとした時に大きな爆発音を聞いた。土ぼこりと煙が立ち上り、遺体と血の飛び散る凄惨(せいさん)な光景が目の前にあった。
同国の親米暫定政権を支持し、反政府武装組織「フーシ」と戦うサウジアラビア主導の有志連合による空爆だった。サウジは、フーシの攻撃に対する報復として「正規の標的」を狙ったと主張している。
フーシが10日の記者会見で発表したところによると、この空爆で子ども40人を含む51人が死亡、子ども56人を含む79人が負傷した。
フーシ系のテレビ局は、現場にいち早く駆け付けた救急隊員の話を伝えた。負傷者の手当てを急ぐなかで抱き上げた少年の遺体。その顔は隊員自身の息子だったという。
サアダでは13日、生徒たちの葬儀に数百人が集まった。葬列とともに掲げられたプラカードには、「米国がイエメンの子らを殺した」という文字もあった。フーシは同日、国内各地で追悼の行進を主催した。
国連のグテーレス事務総長はこの空爆を非難する声明を出し、中立機関による迅速な調査を求めた。
米国のマティス国防長官は12日、調査と再発防止に協力するため、米軍の将官1人をサウジへ派遣したことを明らかにした。
イエメンのバス空爆、遠足にはしゃぐ子どもたち