クローンで動脈硬化の研究、「病気を持って生まれる」犬に賛否 中国

「ロンロン」など3匹は遺伝子操作された「アップル」のクローン

2017.12.30 Sat posted at 09:57 JST

(CNN) ビーグル犬の遺伝子を操作して動脈硬化を起こさせ、さらにその犬のクローンを作って治療薬の開発などに役立てようとする中国企業の取り組みに対し、賛否両論が巻き起こっている。

北京に本社を置くバイオ企業、サイノジーンはまず、ビーグル犬「アップル」が動脈硬化を発症するように遺伝子を操作した。アップルからさらに、同じ遺伝子を持つクローンの「ロンロン」、続いて「シーシー」と「ヌオヌオ」の計3匹を誕生させることに成功した。

同社によれば、ロンロンは遺伝子を操作した犬から作られた世界初のクローンだった。遺伝子を改変する「CRISPR」という技術と、体細胞を使うクローン技術を同時に活用した初めての事例だという。

4匹とも今のところ動脈硬化の兆候はみられないが、研究チームは健康状態を注意深く監視している。すでに動脈硬化の治療薬を健康な犬に投与する実験も進めている。

動物の遺伝子を操作する研究は他国にもみられるが、トップを走っているのは中国だ。これまでに自閉症の遺伝子を持ったサルや、遺伝子にもともと組み込まれているレトロウイルスを不活性化したブタなども誕生させている。

こうした研究に対し、米動物愛護団体「PETA」は「倫理に反する」との批判を展開。サイノジーンに対し、「クローン作りは多額の金がかかるだけでなく、本質的に残酷だ」と抗議する声明を出した。研究に使われる資金は野良犬を助ける活動に使うべきだと、PETAは主張する。

「ロンロン」を作った科学者は、こうした取り組みが将来の医薬品開発などの手助けになると考えている

中国は実験動物の供給、使用ともに盛んな国で、当局のデータによれば、マウスを中心に年間約2000万匹が使われている。

しかし、専門家によれば、こうした動物を守る法律は整備されていない。国営メディアは昨年、政府が実験動物についての規制強化を目指していると伝えたが、いつ施行されるのか、法的拘束力が与えられるのかは明らかでない。

サイノジーンの幹部によると、犬のクローン作りは成功率が50%前後。アップルの体細胞の核を移植した受精卵は4匹の代理母の子宮に入れたが、このうち2匹は妊娠しなかった。

アップルの遺伝子操作も、5匹が失敗に終わった末にようやく成功したという。

「ロンロン」は動脈硬化を持って生まれてきた

しかし同社の研究者らは、今後も薬の開発などに役立てるため、クローン犬をさらに増やす構えだ。これまで犬に動脈硬化を起こさせるには、糖分と脂肪分の多い食事を強制的に与え続ける方法が取られてきたのに比べると、犬の苦痛は小さいと主張する。

同社はさらに、クローン技術で警察犬や盲導犬、一般のペット向けの犬も増やす計画だという。

バイオ研究者の間からは、将来こうした研究の規模が大きくなり、期間も長くなれば、科学の発展と動物保護のバランスを取る必要が出てくると予想する声も上がっている。

遺伝子操作した犬で治療薬の開発 中国

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