靴や衣類の修理を奨励、減税や還付で優遇 スウェーデン

スウェーデン政府が、靴や衣類の修理を促進する政策を議会に提出した

2016.09.26 Mon posted at 18:11 JST

(CNN) 傷んだ靴を修理するのと新しい靴を買うのとではどちらが安上がりか。手作業で直す人件費を考えると、大量生産品を買う方が安くつくこともある。しかしスウェーデンは修理代にかかる付加価値税引き下げなどの措置により、そうした状況を変えたい考えだ。

対象となるのは靴や衣類、皮革製品、家庭用繊維製品、自転車など。修理代にかかる付加価値税を25%から12%に引き下げることにより、修理して使い続けることを促す。この措置は20日に議会に提出された政府予算案に盛り込まれた。

さらに、洗濯機や冷蔵庫、ストーブといった家電製品の修理代は、最大で半分まで所得税から還付申請できる。これに伴い税収は推定で7億4000万スウェーデン・クローナ(約87億円)減る見通し。

ボルンド金融市場・消費者問題相は今回の措置について、スウェーデンの社会で持続可能な消費を望む声が高まっていると述べ、大量消費による二酸化炭素(CO2)排出量削減を目指す政府の戦略の一環でもあると説明した。

消費者は明らかにそれを望んでいるとボルンド氏は述べ、オーガニック食品の売り上げは年に40%のペースで増え、フェアトレード製品の売り上げも伸びていると指摘。しかし現時点でそうした行動は困難を伴うことから、経済的な奨励策を求める声が強まっているとした。

大量消費の流れに歯止めをかけることで、世帯間の経済格差の解消も見込めるという

今回の措置はファッション業界も含めて幅広い支持を得ているといい、H&Mなどの小売店も古くなった衣類の回収と引き換えに割り引きを実施している。

DIY(日曜大工)文化の復活や、民泊サービス「Airbnb」に代表されるような共有経済のトレンドにも沿うとボルンド氏は述べ、「世帯間の経済格差を減らす手段にもなる」と期待する。

政府は修理業界を活性化させることにより、難民の労働力も活用できると見込む。「スウェーデンに来る多くの人たちは、故国で白物家電などの修理を経験したり事業を営んだりしていた。スウェーデンの労働市場は、高等教育を必要としない職種の人材が大幅に不足しているが、それを急拡大させることができるかもしれない」とボルンド氏。

政府案ではさらに、電化製品で人体に有害とみなした化学物質の使用量を減らすよう、メーカーに対応を求める。例えば携帯電話のプラスチックケースに含まれる臭素化難燃剤などが対象となる。

スウェーデン化学物質庁(KEMI)によれば、皮膚接触や摂取を通じて臭素化難燃剤の1種であるペンタBDEに露出した場合、深刻な健康被害が生じる危険がある。欧州連合(EU)では特定の濃度について使用が禁止されている。また、臭化ビニールも発がん物質に指定されている。

この措置に対しては家電業界が強く反発。「KEMIなどは懸念を裏付ける科学的根拠を示していない。特定の難燃剤の露出量は極めて低く、新製品ではほとんど検出できない。複数の研究によると、ユーザーを危険にさらすことはない」と主張している。

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