72メートルの素潜りに挑戦の男性、浮上後に死亡

2013.11.19 Tue posted at 11:51 JST

(CNN) バハマで開かれた素潜りの大会に出場し、72メートルの潜水記録に挑戦していた米国人男性が、浮上した直後に意識を失い、死亡した。大会関係者が明らかにした。

米ニューヨーク在住のニコラス・メボリさん(32)は17日、バハマ諸島にある深さ202メートルの海底洞窟「ディーンズ・ブルーホール」で開かれた大会に出場。タンクや足ひれなどの装備なしで潜り、72メートルの記録達成を目指していたが、浮上して「OK」のサインを出した30秒後に意識を失った。

同大会は10日間の日程で開かれ、世界21カ国から56人のダイバーがさまざまなイベントに参加していた。

素潜りは何千人もの愛好者に、ほかに比べるもののない体験をもたらす。世界選手権で十数回の優勝経験を持つウィリアム・トルブリッジ氏は「静まり返った深い水の中に浮かぶ感覚は素晴らしい」と話す。

素潜りでは体内にさまざまな生理学的変化が起きるという。「ほかのスポーツでは経験できない現象がブラッドシフトといって、両手両足の血液が体の中心に集まる。水圧で肺が縮み、そこへ血液が集中する」と、トルブリッジ氏は説明する。

「身体的スポーツであると同時に精神的なスポーツでもある。いや応なくその瞬間を生きることになるのが素晴らしいところだ。水の中では悩みも解けてなくなり、ただそこにいる自分だけが残る」という。

同氏は2006年、浮上前に意識を失った。味覚も失ったまま回復していない。

素潜りで死者、負傷者が出る頻度について、はっきりとした統計はない。アウトドアスポーツ誌「アウトサイド」は「報告されない死亡例もある一方、記録されている数字には漁などほかの活動の一環として素潜りをするケースも含まれる」と指摘する。世界各地で素潜りに関連する死者数を調べたある推計では、05年が21人、08年が60人だった。

素潜りの大会を撮影する写真家のローガン・モック・バンティング氏によると、素潜りには危険がともなうが、本格的に取り組むダイバーたちは決して無謀なわけではない。別のダイバーが付き添い、万が一の場合には水面に連れ戻す。そこには医療チームが待機している。

「こうしたスタッフのプロ意識と絶え間ない訓練があってこそ、選手は最大限の自信を持って限界に挑戦し、トップクラスの結果を出すことができる。選手を取り巻く態勢は非常に強力だ」と、バンティング氏は話す。

ダイビング専門誌「サウス・フロリダ・ダイブ・ジャーナル」は、まず心拍数を落とし、全身の力を抜いて潜行するといった素潜りの段階を追ったうえで、「水中では魚の形の流体力学的な意味に思いをはせ、この陶酔感をなぜ今まで味わおうとしなかったのかと考えることだろう」と紹介している。

素潜りに挑戦の男性が死亡

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