四輪駆動バイク攻撃・3Dプリントドローン・弾薬不足――ウクライナ南部前線の内側

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ロボティネで戦うウクライナ軍部隊の指揮官、アントン氏/CNN

ロボティネで戦うウクライナ軍部隊の指揮官、アントン氏/CNN

ウクライナ・オリヒウ近郊(CNN) ドローン(無人機)で撮影された粗い画質の赤外線映像に、泥道を駆け抜ける四輪駆動バイクが映る。目的地は定かではない。バイクが急に方向転換したところで、ウクライナ軍のドローンから投下された榴(りゅう)弾が直撃。ロシア兵たちはよろめきながら避難している様子で、1人は地面を転がっている――。

CNNに提供された映像には、ウクライナ南部ザポリージャ戦線でロシア軍が駆使する自殺的とも言える最新戦術が捉えられている。ロシア軍は大胆さを増しており、はっきりしない目標のために人員を犠牲にすることもいとわない。

ベルギーから供与された装甲車の運転手、ボーダン氏/Maja Rappard/CNN
ベルギーから供与された装甲車の運転手、ボーダン氏/Maja Rappard/CNN

南部ロボティネ前線で戦う兵士たちはCNNの取材に、ここ数週間、ロシア軍の相次ぐ夜間攻撃がウクライナの陣地を襲っていると証言した。四輪駆動バイクに3人乗りするのが通常の手口だという。ドローンの映像には、四輪駆動の全地形対応車(ATV)が白昼炎上する様子も映っている。一帯は人けのない荒涼とした平原で、瓦礫(がれき)や遺体が散乱する。

前線では現在、ウクライナ、ロシア両軍によるドローンの使用が拡大しており、兵員のローテーションから強襲まで、大半の作戦は安価な使い捨てドローンの有効性が低下する暗闇の中で行われる。こうしたドローンは爆発物を搭載して目標に突っ込む。

ウクライナ軍第15国家警備隊のドローン操縦士、ココス氏は四輪駆動バイクについて「装軌車両よりも機動性が高い。大砲で攻撃するのは難しいので、ドローンを使用せざるを得ない」と語る。

子ども向けのエンターテイナーからドローン操縦士に転身したココス氏/CNN
子ども向けのエンターテイナーからドローン操縦士に転身したココス氏/CNN

拘束したロシア兵の中には、酩酊(めいてい)しているとみられる者もいた。「攻撃前に薬物を投与されたと捕虜から聞いた。拘束された兵士は丸一日、食事も睡眠も取らずに過ごす」とココス氏。夜間攻撃については、「彼らはひっきりなしに押し寄せてくる」と語った。

ベルギーから供与された装甲車を運転するボーダン氏は、ロシアのドローンに妨害され、装甲車を使って死傷者を前線から退避させる任務に支障が出ていると語る。「周辺に多くのドローンが飛び回っているせいで、任務の難度が上がった」という。

ロボティネ前線のウクライナ軍は、この小村の奪還に躍起になるロシア軍と対峙(たいじ)している。昨年夏の反転攻勢では、ロボティネが南部前線の主な戦果の一つとなった。

数週間の激しい戦闘を経て、村にはウクライナ国旗が掲揚された。冬の間も瓦礫の周りで断続的に戦闘が続いた。

しかし2月17日のアウジーイウカ陥落以降、ウクライナ軍の当局者から、ロシアが定期的にロボティネを攻撃しているとの報告が寄せられている。CNNは28日午前、ドローンを通じ、村の南端でロシアの装甲兵員輸送車の残骸から煙が上がっているのを確認した。前夜の攻撃の名残だ。

第65機械化旅団のアンシー氏はCNNに対し、「彼らは通常2~3台の車両で前進する。時には15台に上ることもある」と語った。歩兵が支援に当たるという。「絶え間なく攻撃がある。具体的にどの時間帯、というのはない」

ロボティネ前線で戦う多くのウクライナ兵と同様、アンシー氏も米国の財政・軍事支援の遅れのせいで「本来の力を発揮できていない」と語る。「弾薬不足は深刻。1個当たりの攻撃目標に投入できる砲弾の数に影響する」

執ような攻撃を受けるオリヒウの損壊した建物/Maja Rappard/CNN
執ような攻撃を受けるオリヒウの損壊した建物/Maja Rappard/CNN

指揮官のアントン氏によると、北大西洋条約機構(NATO)の資金や支援が得られた反転攻勢の時期には1日80発の砲弾を発射していたが、現在は10発ほどにとどまるという。

「地下の掩ぺい壕(ごう)で砲撃死する危険と隣合わせの兵士」と聞いて想像する以上に、アントン氏は共和党による議会手続きの機能不全について思いを巡らせていた。

「対ウクライナ支援に関する共和党の政策は理解できない」(アントン氏)

「最大の問題は弾薬不足。我々は弾薬を待ちわびている。今すぐ必要だ。弾薬さえ増えれば、命を落とさずに済む兵士や民間人が増える」

アントン氏のそばで明滅するドローンのモニター上に、2発目の榴弾が塹壕内に投下される様子が映し出された。廃虚と化した塹壕をよじ登るロシア兵2人の姿が見える。1人はシャベルを振り回している。

ウクライナ軍のドローン操縦士はいま、部隊の入れ替えで規模が格段に大きくなったロシアのドローン部隊と対峙している。「相手の数については把握していない。ロシアはあらゆるものを大量生産する。品質は劣るが、とにかく数が多い。1機をジャマー(電子妨害装置)で制圧しても、すぐに別の1機が送られてくる」

新たな脅威となっているのが「FPV(一人称視点)攻撃ドローン」だ。暗視装置付きのゲーム用ヘッドセットで操縦する。ウクライナの部隊が拠点とする農業小屋の裏では、3Dプリンターが音を立ててドローンの部品を吐き出していた。ココス氏の推計では1日10機程度のドローンを「プリント」する能力があるが、物資が限られている中、クラウドファンディングで資金調達している状況だ。

別のドローン操縦士、セイント氏(22)は奪取したロシアのFPVドローンを手に、「我々のドローンより作りが良い。我々の機体はカーボン製だが、彼らはアルミ製だ。破片も搭載量も増える」と語った。

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