旧植民地におけるフランスの影響力の衰退、ガボンのクーデターで露呈

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破られたボンゴ大統領のポスター/AFP/Getty Images

破られたボンゴ大統領のポスター/AFP/Getty Images

(CNN) ガボンのレオン・ムバ大統領が1964年、軍からトップの座を追われた際、当時のフランス大統領シャルル・ドゴール氏はすぐさま行動し、ただちにフランス軍の部隊を派遣してムバ氏を復権させた。

独立したばかりのガボンは鉄鉱石やその他重要な鉱物の宝庫で、旧フランス植民地の中でもとくに重要な国だった。ドゴール大統領は是が非でもフランスの利害を守ろうとしたのだ。

それから月日が流れて約60年後、ガボンでまたもやクーデターが発生した。だが今回はフランスの「騎兵隊」が駆け付けることはないだろう。フランスは他にも軍事政権下に置かれている同盟国と折り合いをつけている最中だからだ。専門家はフランスの影響力が薄れている兆しと見ている。

不正行為が横行し、インターネットが封鎖された大統領選挙の結果、ガボンでは驚きの展開が見られた。軍関係者が8月30日、国営放送局になだれこみ、今後は軍が政権を握ると発表。選挙結果を無効として、憲法も解体した。

首都リーブルビルの街で銃声が鳴り響く中、軍は50年間続いたボンゴ一族の支配の終焉(しゅうえん)を宣言した。一般市民を犠牲にしてボンゴ一族に膨大な富をもたらした時代の終焉をガボン国民が祝う中、街は歓声が沸き、祝賀ムードに包まれることだろう。

軍事政権はその後、ボンゴ大統領のいとこといわれる軍幹部のオリギ・ヌゲマ氏が暫定大統領を務めると発表したほか、他の6人とともに「反逆罪」で逮捕された大統領の息子、ヌレダン・ボンゴ・バランタン氏の容疑についても当局が調査を進めると明らかにした。

AFP通信が放映した動画に登場したボンゴ氏は、独りでおびえながら国際社会に支援を求めた。

「民主主義独裁者」の後ろ盾

ガボンのクーデターに国際社会からは非難の声が上がったものの、先月ニジェールでクーデターが発生した時のような猛烈な非難が集まることはなかった。

ボンゴ大統領の命運が尽きたというのが専門家の意見だ。

「ガボンの国民は、50年間経済状況を改善できなかった支配体制に終止符を打ちたがっている。これまでも投票で民意が示されたが、蔑ろにされた」と語るのは、安全保障研究所のオルウォレ・オジェワレ氏だ。

2018年に脳卒中に見舞われて衰弱したボンゴ氏は、19年にもクーデター未遂に直面した。この時は発生とほぼ同時に鎮圧し、なんとか命拾いしたと見られていた。

フランスのボルヌ首相は、政府がガボンのクーデターの行方を「最大の関心をもって」注視していると述べた。

フランスにとっても難題だ。これまでアフリカ西部および中部では、わずか3年の間に八つの旧フランス領が軍事政権の手に落ちている。いずれの国でも、旧宗主国の干渉に端を発する反フランス感情の波が押し寄せている。

例えばマリではフランス軍の部隊が追放され、外交関係が断たれた。公用語もフランス語から、マリ国内で話されている言語に変更された。一方セネガルではフランス企業が攻撃の的になっている。

セネガルの首都ダカール在住の外交アナリスト、クリス・オグンモデデ氏はCNNの取材に、「フランスの政策は支持されていない。それでこうした抗議活動が起き、フランスの新植民地主義を象徴するフランス企業が攻撃されている」と述べた。

フランスの駐ニジェール大使は国外退去を命じられたが、フランス政府が軍政を承認しないことを理由に、いまだ国内にとどまっている。

8月27日には首都ニアメー近郊のフランス軍基地付近で、クーデターを支援する大規模なデモが行われ、集まった群衆はフランス軍の撤退を要求する看板を掲げた。

刻々と変化する政治情勢により、旧宗主国によって敷かれた政治体制の脆弱(ぜいじゃく)さが浮き彫りになった。

「旧フランス植民地の統治制度はフランス政府から押し付けられたもので、もはや目的にそぐわない。ガボンのような国では、ある一族が50年近くも国を統治している。こんなのは政府じゃない、王国だ。旧植民地国はフランスの飛び地ではない」(オグンモデデ氏)

こうした現象はガボンだけに限らない。コンゴ共和国や赤道ギニアをはじめとするアフリカ中部の国々では、1人の指導者が40年以上も国を統治している。カメルーンのビヤ大統領は1982年に就任し、今年90歳。1年の大半をフランスとスイスで過ごし、本来であれば統治するはずのカメルーンにはほとんど寄り付かない。

それにもかかわらず、西側諸国、とりわけフランスは、ビヤ氏をはじめとするアフリカの指導者について見て見ぬふりをしている。

オグンモデデ氏の言葉を借りれば、「ニジェールでのクーデターの後にガボンで起きた現在の状況で、フランスとアフリカ旧植民地との関係が機能していないことが改めて浮き彫りになった。西側によるアフリカの独裁者への支援は、西側が糾弾する軍事クーデターと同じぐらい民主主義統治をむしばんでいる有害なものだ」

アフリカでは若者層を中心に政治意識が変化し、それが反フランス感情をあおっている。

アフリカ全土の平均年齢が20歳であることも、変化を切望する若者の姿を一層際立たせている。若者は従来の対仏関係を超え、多方面での協力関係を求めるようになっている。

「親世代や祖父母世代とは違い、若者はフランスに対する執着がない。彼らは、フランスが彼らの国に最初に戻る権利を持つべきだとは思っていない。フランスだけでなく、複数のパートナー国を求めている」(オグンモデデ氏)

そうしたパートナー国のひとつが、アフリカ大陸での外交拡大に積極的なロシアだ。アフリカ指導者が次第に親ロシアに傾く中、ロシア国内では米国に先手を打ったという意見も出ている。

言葉の壁を越えようとする動きもある。例えば、54カ国の加盟国から成る政治的集合体である英連邦は、つい最近ガボンとトーゴの加盟を認めた。こうした方向転換からも、英語圏の国々の間で連携を求める声が高まっていることがうかがえる。

複雑な関係

アフリカでのフランスの役割は大きな変化を経験してきたが、フランスは旧植民地国から完全に離脱したわけではないという意見もある。

「フランスから独立を承認されても、いまだにフランスとへその緒でつながっているという感覚がある。フランスからの暗黙の了承がなければ、フランス語圏では何も変わらないという思いがなんとなく存在する」(オジェワレ氏)

現在進行中のパワーバランスの転換は、フランスと旧植民地の複雑な関係性を如実に物語っている。

「フランサフリック」とはフランスと旧植民地国でいまなお続く新植民地主義的な関係を表現した言葉だ。フランサフリック的な事例からも、アフリカ諸国の内政をフランスが支配しているとの見方が長く続いている。

「フランスは、フランサフリックを手段として、旧植民地で新植民地主義的な影響力と、それを支える思想的枠組みを維持しようとしている」(オグンモデデ氏)

その例として、最も物議を醸しているのが中央アフリカフラン(CFA)だ。ニジェールやガボンも含め、アフリカ西部および中部14カ国で使われている通貨だ。

CFAフランを採用している国々は、通貨の50%を外貨準備金としてフランス銀行に預金しなければならない。またCFAフランの為替レートはユーロに固定されている。こうした預金条件は、多くのアフリカ諸国から植民地時代の税制度の名残だと受け止められている。

フランス政府は経済の安定を促進するシステムだと主張しているが、このシステムを乱用してフランスがアフリカ経済を支配し、アフリカの富で自国を豊かにしていると主張する意見もある。

セネガル人経済学者のンドンゴ・サンバ・シラ氏はCFAフラン廃止を呼びかけている。

「競争力の高い製品の輸出や、手ごろな額の借り入れ、アフリカ大陸の貿易統合、帝国主義の支配からの脱却を望む人々にとって、CFAフランは前世紀の遺物だ。整然かつ順序だてて排除するべきだ」と同氏は19年のインタビューで語っている。

ほとんどの旧植民地国には今もフランス軍の部隊が駐留している。ニジェールでは大規模なバルハン作戦にも関与したフランス軍は、最近になって撤退を余儀なくされた。

フランスのマクロン大統領は先ごろ、フランスの対アフリカ政策を刷新し、今後は現地政府と合同でフランス軍事基地を運営すると発表した。

皮肉なことに、アフリカでのフランスのふるまいに向けられた非難に対してかつてないほど積極的かつ直接的に対処し、アフリカとの関係改善に取り組んできたのがマクロン政権だ。

10代をナイジェリアで過ごしたマクロン大統領は対アフリカ支援を強化し、植民地紛争中に持ち去られた文化遺産の返還を進めた。また従来の政治的関与の枠を超え、若者世代や市民社会とも関わりを深めようとしている。

最近では3月、マクロン氏はアフリカ歴訪の締めくくりにこう語った。「アフリカは競争が行われる場だ。競争は公正な枠組みの中で行われなくてはならない。フランスは自らの役割を過不足なく果たしていく」

本稿はCNNのステファニー・ブサリ記者の分析記事です。

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