前線の怒り、国内の不安――問題に直面するロシアの動員

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ボルゴグラード州の集合地点で予備兵らの前に立つロシア軍人=9月28日撮影/Stringer/Reuters

ボルゴグラード州の集合地点で予備兵らの前に立つロシア軍人=9月28日撮影/Stringer/Reuters

訓練不足

欧米の当局者の間では、ロシアは未経験者が大半を占める新兵の統合に苦慮しているとの指摘が出ている。

英国防省は先ごろ、「おそらくロシアは現在の動員や秋の定期徴兵で入隊した新兵の軍事訓練に苦慮している。新規動員兵は最低限の訓練しか受けていないか、全く訓練を受けていない可能性が高い。経験豊富な将校や訓練教官は既にウクライナでの戦闘に動員されており、一部は戦死したとみられる」との分析を発表した。

ウクライナの情報機関によると、ロシア軍は士官候補生の卒業時期を早めているとされるが、ステパネンコ氏は「士官候補生の方が軍務に慣れているかもしれないが、戦闘でどの程度効果的な働きをするかは未知数だ」と指摘した。

ウクライナの当局者は、ロシアの動員で戦闘員の数が増えた結果、ウクライナ軍が多方面作戦を余儀なくされていることは認めている。ただ、ロシアの新兵は何の準備もないまま戦闘に投入されているという。

ルハンスク州のウクライナ軍政当局トップ、セルヒ・ハイダイ氏は先日、スバトベ付近では新兵が繰り返す波のように突進してきたと明らかにした。

「彼らが死亡すると、次の一群が前進する。新たな攻撃のたびにロシア人は死者を踏みつけて進んでいる状況だ」

冬の到来に伴い、本拠地から遠く離れた兵士に住居や物資を確保する必要性は一段と高まっている。

ナタリア・イワノワ氏は地方当局のSNSのページに、夫の部隊は何時間も外で待たされたあげく派遣が中止になったと投稿し、「全員発熱して体調不良を訴えている」と書き込んだ。

前出のステパネンコ氏は、まだウクライナに送られていない新規動員兵の間で、主に給料をめぐる抗議が起きていると指摘する。特に目立つのはチュバシ共和国とウリヤノフスクの例だ。

今月初めには、チュバシ共和国の男性数十人を捉えた動画が浮上。プーチン氏の大統領令で約束された19万5000ルーブル(約44万7000円)を受け取っていないと憤る様子が映っている。

テレグラムの非公式チャンネルによると、この部隊はその後、全員自宅軟禁処分になったという。

30万人を超えるロシアの動員の影響について完全な評価を下すのは時期尚早だ。これは侵攻当初に投入された要員の倍の人数であり、9カ月に及ぶ戦闘で消耗した部隊の補充には役立つだろう。

ただ、これらの兵士の質や現場の指導力、優れていたためしがないロシアの補給線を踏まえると、ロシア軍の前途が明るいとは言い難い。

ステパネンコ氏は「死者や給料未払いの報告が増え、さらに多くのロシア人に動揺が走る可能性がある。戦争賛成派も、動員で戦争に巻き込まれただけの人も動揺するだろう」とみる。

現時点では、動員によりプーチン氏の特別軍事作戦が目標達成に少しでも近づいた様子はない。

それどころか、ロシアが9月に大々的に併合した地域の一部では、ウクライナの国旗が再び掲げられている状況だ。

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