アブダビの空港、世界初の完全ペーパーレス化へ 施設全体に生体認証を導入
(CNN) 空港でパスポート、身分証明書、航空券のいずれも見せることなく飛行機に搭乗することを想像してみてほしい。
アブダビのザイード国際空港では、2025年までにそれが現実になるかもしれない。
ザイード国際空港は、ハイテクなインフラで知られており、最近、米起業家のイーロン・マスク氏も「米国も見習うべきだ」と称賛した。
そのザイード国際空港が、チェックインカウンターから出入国審査、免税店のレジ、航空会社のラウンジ、搭乗ゲートに至るまで、空港内の本人確認を要する全てのチェックポイントへのバイオメトリクス(生体認証)センサーの導入を目指す「スマート・トラベル・プロジェクト」を開始した。
バイオメトリクスとは、生物学的特徴を基に個人を識別する技術だ。バイオメトリクスセンサーの導入により、入場や利用の際に文書の提示が必要な場所で、乗客の身元や旅行の状況が顔認識や虹彩(こうさい)認識によって確認可能になる。
開業から40年ほどのザイード国際空港は、テクノロジーの領域で業界の主導的立場にある/Nicolas Economou/NurPhoto/Getty Images
斬新な技術
アブダビでは、空港の特定のセクション、特に提携航空会社であるエティハド航空が運航するフライトで、このバイオメトリクスがすでに使用されているが、乗客の動線全体にこの技術を拡大しようという同空港の野心は画期的だ。
アブダビ空港の最高情報責任者(CIO)を務めるアンドリュー・マーフィー氏は、「(バイオメトリクスの使用を)九つのタッチポイントに拡大する予定であり、実現すれば世界初となる」と語る。
「事前登録は不要で、乗客が空港内を移動すると自動的に識別・認証されるため、全体のプロセスが大幅にスピードアップする」(マーフィー氏)
マーフィー氏によると、居住者か旅行者かにかかわらず、アラブ首長国連邦(UAE)に初めて到着した人は、入国審査時に連邦身分・市民権・税関・港湾保安庁(ICP)によって生体情報が収集されるという。
そして空港のシステムがこのデータベースを利用し、乗客がチェックポイントを通過する際に本人確認を行う。
その目的は、乗客の流れをスムーズにし、チェックポイントを通過する時間を大幅に短縮することだ、とマーフィー氏は言う。実際、同空港にこの技術が最初に導入されて以来、その効果は実証済みだ。
「空港の利用者によると、ターミナルの外から小売りエリアやゲートまで15分もかからないという。年間4500万人もの乗客に対応可能な巨大な施設であることを考えると、その規模の空港内をわずか数分で移動できるというのは本当に画期的だ」(マーフィー氏)
「スマート・トラベル・プロジェクト」の目的は乗客の流れをスムーズにし、チェックポイントを通過する時間を大幅に短縮することだ/AlxeyPnferov/iStock Editorial/Getty Images
世界の空港がバイオメトリクス導入を競う
世界には、紙の使用を減らし、バイオメトリクスへの依存度を高めている空港が他にも存在する。
シンガポールのチャンギ国際空港も、バイオメトリクスの導入において業界をリードしている空港の一つだ。同空港もアブダビと同様に政府の入国管理当局と提携し、居住者と旅行者のどちらも利用可能なバイオメトリクス・クリアランスを開発している。このシステムは先月から徐々に導入が始まっている。
香港国際空港、日本の成田空港と羽田空港、さらにインドの首都デリーにあるインディラ・ガンディー国際空港でも、すでにトランジット中の特定のポイントでバイオメトリクス端末を導入している。
また欧州の空港も大きな進歩を遂げている。
昨年、国際航空運送協会(IATA)は、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)と協力し、全てのプロセスがデジタルIDのみで完結する国際線の試験運航を行った。
ロンドン・ヒースロー空港からローマ・フィウミチーノ空港までの路線で行われたこの試験飛行の乗客は、W3C検証可能クレデンシャルと呼ばれるデジタルIDのみで旅行した。彼らのパスポート、ビザ、電子チケットは全てデジタルウォレットに保存され、生体認証によって確認が行われた。
また米国では、税関・国境警備局(CBP)が入国審査を行っている全96の国際空港の到着ゾーンでバイオメトリクスが導入されており、そのうち53の空港では出発ゾーンでも同技術が利用されている。