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壁にテープで貼った芸術作品のバナナ、学生が食べる 「空腹だったから」

「コメディアン」と題された作品は、壁に粘着テープでバナナを貼りつけてある

「コメディアン」と題された作品は、壁に粘着テープでバナナを貼りつけてある/Cindy Ord/Getty Images

壁に粘着テープで貼られて手の届く距離にあるバナナは、見方によっては近年の芸術史にセンセーションを巻き起こしたムーブメントかもしれない。だが別の見方をすれば、魅惑的な軽食でもある。

韓国のソウル国立大学で美術を学ぶ男子学生は後者だった。4月27日、学生はソウルのリウム美術館に展示されていたこの果実――イタリアの芸術家マウリツィオ・カテランさんの象徴的な作品――を壁からはがすと、そのまま平らげてしまった。

「学生は美術館に対し、空腹だったので食べたと話した」。美術館の広報はCNNの電話取材にそう語った。

「コメディアン」と題した作品は2019年、現代美術展のアートバーゼル・マイアミビーチで12万ドルで売れ、芸術界に大きな話題を巻き起こした。関連する2作品も同展示会で販売された。

バナナの実を食べた学生は、皮を壁に戻してテープで貼り付けた。美術館はその後、この皮を新鮮なバナナに入れ替えた。

食べられてしまったバナナ/shwan.han/Instagram
食べられてしまったバナナ/shwan.han/Instagram

「突然の出来事だったので、特に行動は取らなかった。アーティスト(カテランさん)には連絡したが、それに対する反応はなかった」と美術館の広報は言い添えた。

この作品は、同美術館で7月16日まで開かれているカテランさんの作品展WEに出展されていた。バナナは2~3日ごとに交換されていて、販売はされていない。

カテランさんは大衆文化に対する風刺的な作品で知られ、コンセプチュアルアートにまつわる論議を巻き起こすこともある。

ソウルのリウム美術館で、「コメディアン」と題した作品は7月まで展示されている/Kim Kyoungtae/Maurizio Cattelan/Leeum Museum of Art
ソウルのリウム美術館で、「コメディアン」と題した作品は7月まで展示されている/Kim Kyoungtae/Maurizio Cattelan/Leeum Museum of Art

芸術作品を摘み取る機が熟したと思う人が現れたのは、今回が初めてではなかった。

19年、最初の「コメディアン」が売れた後に、パフォーマンスアーティストのデービッド・ダトゥナさんは、アートバーゼルが開かれた米マイアミのペロティンギャラリーに展示されていたバナナを唐突にはぎ取ると、周囲が茫然(ぼうぜん)と見守る中で、平然と平らげた。

ダトゥナさんはこの出来事を楽しそうに振り返り、当時のインスタグラムに「私は本当にこの展示品が気に入った。すごくおいしい」と書き込んだ。その後の記者会見では、これは芸術パフォーマンスであり、破壊行為ではなかったと弁明していた。

作品が売れてニュースになる以前、ペロティンさんはCNNの取材に対し、このバナナは「国際貿易の象徴であり、二重の意味を持つと同時に古典的なユーモアの仕掛け」だと解説し、カテランさんはありふれたものを「喜びと批判の両方の媒体」に転換させると言い添えた。カテランさんは、作品が傷み始めたらどうすべきかを見込み客に指示していなかった。

この作品は著作権争いも引き起こした。22年、米カリフォルニア州グレンデールの芸術家、ジョー・モーフォードさんは、カテランさんの作品について、自身の00年の芸術作品「バナナ&オレンジ」の盗作だと主張して訴えを起こした。モーフォードさんの作品は、壁の緑色に塗った背景の上にバナナとオレンジが粘着テープで貼り付けられていた。

裁判書面によると、カテランさんが「コメディアン」を制作するずっと前に、モーフォードさんは自身の作品を米著作権局に登録し、自身のウェブサイトやフェイスブック、ユーチューブのアカウントに掲載していた。

これに対してカテランさん側の弁護士は、壁に貼り付けたバナナと粘着テープという同作品の要素に対するモーフォードさんの「有効な著作権はない」と反論している。

カテランさんは、「アメリカ」と題した18金のトイレ(時価600万ドル前後)で注目を浴びたこともある。黄金のトイレは16年に米ニューヨークのグッゲンハイム美術館に導入され、入館者が使用することができた。その後、19年に英イングランドのチャーチル元首相の生家のブレナム宮殿で展示していたところを何者かに盗まれ、今に至るまで見つかっていない。

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