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マリー・アントワネットと恋人とされる貴族の手紙、修正部分が判明

M・アントワネットと恋人の交わした手紙で、上書きされた部分の内容が明らかになった

M・アントワネットと恋人の交わした手紙で、上書きされた部分の内容が明らかになった/Centre de Recherche sur la Conservation

マリー・アントワネットとその恋人とされる人物の間で交わされた手紙について、上書きされた数行の内容がこのほど初めて明らかになった。解明には最先端の科学技術が使用された。

手紙は処刑される運命にあるフランス王妃のアントワネットとスウェーデンのアクセル・フォン・フェルセン伯爵がフランス革命の間にやり取りしたもの。フランスの保存研究センター(CRC)の科学者グループが分析し、結果を科学誌に発表した。

王妃マリー・アントワネットがフォン・フェルセン伯爵に書いた1791年9月26日付の手紙をスキャナーで分析/Centre de Recherche sur la Conservation
王妃マリー・アントワネットからフォン・フェルセン伯爵に書いた1791年9月26日付の手紙をスキャナーで分析/Centre de Recherche sur la Conservation

「国家機密か脱出計画か、あるいは王族による情事の証拠なのか。おそらくは公にしにくいと思われるこれらの内容は、150年近く歴史家を悩ませてきた」と、論文は説明する。今回の研究ではフォン・フェルセンがどのようにして王家のメンバーをフランスから密かに脱出させようとしたかについての詳細も判明。この試みは最終的に失敗した。

両者の手紙は1791年6月から92年8月にかけて出されており、一部は仏国立公文書館に保管されている。

これらの手紙の特定の語句は、無造作に記された文字で上書きされ、何を書いたかが読めないようになっている。

チームは個別の手紙15通の当該箇所を調べ、そのうち8通についてインクを構成する銅と鉄、亜鉛と鉄の比率に一貫した違いがあるのを突き止めた。

科学者らはX線蛍光分光法を用いてインクの元素組成を特定。データ処理技術によって隠された文字を明らかにした。そこには「愛する人」、「優しい友人」、「敬愛」、「狂おしく」といった言葉が記されていた。

フォン・フェルセン伯爵が王妃マリー・アントワネットに書いた1791年10月25日付の手紙をスキャンする様子/Centre de Recherche sur la Conservation
フォン・フェルセン伯爵が王妃マリー・アントワネットに書いた1791年10月25日付の手紙をスキャンする様子/Centre de Recherche sur la Conservation

分析の結果、マリー・アントワネットが書いたと考えられていた手紙の一部は実際のところ、フォン・フェルセンから送られた原本の複製だと分かった。これは当時の一般的な慣行であり、論文によると「重要な手紙については政治的もしくは行政上の理由から複製が作られることがあった」という。

加えてフォン・フェルセンのすべての手紙は、似通ったインクの成分比率を示した。文字を上書きするのに使ったインクの中には、この比率に一致するものもあったとしている。

この点から、フォン・フェルセンが自身とマリー・アントワネットとの手紙の修正に携わっていた可能性が出てくる。CRCは報道発表文で、「手紙はフォン・フェルセンにとって、感傷的もしくは政治的理由から重要だったことがうかがえる」と述べた。

研究者らは、自分たちの技術を駆使すればさらに多くの修正済み史料の秘密を明らかにできると期待を寄せる。

国王ルイ16世の妃だったマリー・アントワネットは、革命前の最後のフランス王妃としてよく知られる。

アントワネットの宝石は91年3月、包装され、木製の収納箱に入れられて密かにフランスからウィーンへと持ち出された。保管に関わっていた忠実な従者の計らいだった。

オーストリア大公妃として生まれたアントワネットと夫のルイ16世はともに93年10月にギロチン処刑された。夫婦の息子もこの後、幽閉中に10歳で死去した。

2018年11月には、アントワネットが個人で所有していた真珠とダイヤモンドのペンダントが競売にかけられ、3600万ドル(現在のレートで約40億円)を上回る値が付いた。競売前の推定落札価格100万~200万ドルを大幅に上回る結果となった。

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