ロンドン(CNN) 故エリザベス女王の公式追悼施設が、英ロンドンに建設される計画だ。緩やかな曲線を描く2本の橋、ブロンズのオークの木、スイレンの葉をモチーフにした歩道など五つのデザインが最終候補に選ばれた。
この国家追悼施設は、ロンドン中心部のバッキンガム宮殿近くにあるセントジェームズパークに建設される。
7日に公開された最終候補には、ロンドン市庁舎や30セント・メリー・アクス(通称ザ・ガーキン)を設計したフォスター・アンド・パートナーズ、米ニューヨーク市のベッセルを手掛けたヘザウィック・スタジオなど、英国を代表する建築事務所が名を連ねる。
プレスリリースによると、英政府と英王室が共同で設立したエリザベス女王追悼委員会の審査員団が今夏に最優秀案を発表する。追悼施設は、故女王の生誕100周年にあたる2026年に公開予定だ。

トム・スチュアートスミスは、ブロンズで作られたオークの木と、全国から集めた石で作られた「記念の道」を構想した/Courtesy Malcolm Reading Consultants
設計要項では、故エリザベス女王の「並外れた奉仕の人生」をたたえる「心に響くような空間」であるとともに、一般市民が女王を思い返す場となることが求められた。
委員会の委員長を務めた故エリザベス女王の元秘書官、ジャンブリン卿はプレスリリースの中で、以下のように述べている。「女王は我々の国家的アイデンティティーの一部であり、我々の価値観の形成に貢献した。激動の時代にあっても一貫性を与えてくれた。また、女王は功績をたたえるうえで欠かせない存在であり、奉仕と義務を体現する人でもあった。その姿勢は信仰によって強められ、現実的な判断力と前向きな姿勢、そしてユーモアによって和らげられていた」
「マスタープランのデザインは、これらすべてからインスピレーションを得る必要がある。追悼施設は、言うまでもなく、美しい場所であり、友人と訪れ、集い、楽しみ、そして並外れた人生に思いをはせる場所でなければならない」
最終候補に残ったデザインはオンラインで公開され、今月19日までフィードバックを受け付けている。

J&Lギボンズが提案した岩の橋/Courtesy Malcolm Reading Consultants
共に架ける
ヘザウィック・スタジオは、スイレンをテーマにした橋を中心とする案を提案した。紹介動画の中で、創業者のトーマス・ヘザウィック氏は、「一体感と結束」を重んじた女王の信念が、公園内の集いの場となる「一体感の橋」という構想につながったと説明した。
女王の像は石灰岩で作られた橋の中央に置かれ、「彫刻的なスイレン」の天蓋(てんがい)がその像を包み込むように設置される。また、在位70年を象徴する70枚の石灰岩でできた「スイレンの葉」と女王ゆかりの植物が植えられた歩道もデザインに盛り込まれた。
調和をテーマにしたもうひとつの案は、フォスター・アンド・パートナーズによるもので、英建築家のジョン・ナッシュ氏が1820年代に手掛けたセントジェームズパークの改修から着想を得た。

フォスターのデザインの特徴は、並木道に立つ騎馬の像だ/Courtesy Malcolm Reading Consultants
このデザインは、曲がりくねった小道でつながれた庭園と、「人々、国家、慈善団体、英連邦、軍を結びつける強力な存在」だった女王を象徴する「結束の橋」で構成されていると、創設者であり建築家のノーマン・フォスター氏は語った。小道には、音声インスタレーションや地面への刻印という形で女王の言葉が紹介され、その中には1953年の戴冠(たいかん)式で語ったスピーチの一節「私の全生涯を通じて、心を込めて皆様の信頼に応えられるよう努める」も含まれている。
提案された彫刻には、故女王と故フィリップ殿下の新たな具象彫刻のほか、英国のアーティスト、インカ・ショニバレ氏がデザインした「風の彫刻」も含まれており、これは「内省と共有の体験の場」となることを意図している。
「国家の基盤」
ランドスケープ建築事務所J&Lギボンズは、女王を「国家の基盤」と見なすビジョンを中心に据え、その象徴として実際の基盤岩で作られた橋を取り入れた案を提案した。またデザインは、木々に囲まれた開けた空間の中で「森林浴」を楽しめるよう設計されており、66年のクリスマス放送で女王が語った「人類の厳しい進歩の中に、優しさと気遣いを吹き込む」という言葉を反映しているという。
ランドスケープ建築事務所のトム・スチュアートスミスの案も自然から着想を得ている。女王の居城だったウィンザー城の私有狩猟場、ウィンザー・グレート・パークにある樹齢数百年のオークの木を再現した作品を提案した。
同事務所は、この木をデジタルスキャンし、実物大のブロンズ彫刻として鋳造する計画だ。「女王のオーク」と名付けられた彫刻は、緩やかにカーブした橋のそばに設置される。夜になると、光沢のある葉は「湖面に映る黄金色の蜃気楼(しんきろう)」に見えるという。このほか、英連邦各国の花をかたどったブロンズの鋳造作品や、女王の影響を受けた人々の記憶を収録した音響作品もある。

ウィルキンソ・エアの提案には、池に架かる二つの橋が含まれる/Courtesy Malcolm Reading Consultants
建築事務所ウィルキンソン・エアは、女王の生涯を象徴する「糸」をモチーフにした遊歩道を提案。遊歩道は、家族、自然、英連邦など、女王の70年にわたる奉仕を象徴する七つのテーマで構成され、訪れた人はそれぞれの「糸」に沿って散策を楽しめる。
また、2層構造の橋からは、公園や王室関連施設、ロンドンのスカイラインが望める。
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原文タイトル:Shortlisted designs for Queen Elizabeth II’s official London memorial unveiled(抄訳)