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ジョコビッチ選手、裁判で勝利も豪州国民の大声援は望めず

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解放後、メルボルンのコートに立つジョコビッチ選手とチームのメンバー/DjokerNole/Twitter/Reuters

解放後、メルボルンのコートに立つジョコビッチ選手とチームのメンバー/DjokerNole/Twitter/Reuters

オーストラリアは世界で最も早い時期にゼロコロナ政策を採用し、2020年3月に国境線を閉じた。

この動きが奏功し、同国は新型コロナ死者を少なく抑えることに成功したが、国民は厳しい反動を被ることになった。

政府が海外からの到着便に制限を加えたことで、数万人の国民が2年近く帰国できない事態に陥った。帰国がかなった国民も、全員が政府の運営するホテルでの2週間の隔離を義務付けられた。

国外への渡航は、取得の難しい特別な免除なしには認められなくなった。国内の州境も一時的に閉じられ、政府の承認する理由がない限り州外の家族に会いに行くこともできなくなった。この規制はその後解除された。

こうした措置に対する抗議行動も起きたが、大半のオーストラリア人はこれに従った。新型コロナの感染拡大により、世界中で大勢の人が亡くなるのを目の当たりにしたからだ。

ワクチン接種の導入は遅かったオーストラリアだが、現在の接種率は世界でもトップクラスとなっている。政府の統計によれば、接種資格のある16歳以上の国民のうち92%が接種を完了。一方で、5~11歳の子どもに対する接種は、まだ始まって間がない。

現在国内の都市で正式なロックダウン(都市封鎖)は行われていないが、スーパーマーケットの中には商品棚が空になっているところも出ている。従業員が体調不良や隔離で欠勤し、サプライチェーン(供給網)に負担がかかっているのが要因だ。また医療従事者が疲弊を訴えているのとは裏腹に、当局者はシステムがうまく回っていると自信をもって断言する状況にもなっている。

こうしたなか少なくとも言えるのは、多くのオーストラリア人がこの2年間を通じ、複数の視点から物事を見る機会を得たということだ。

今や次のような問いを発する人たちもいる。なぜ特別な権利を拡大適用されたスポーツ選手が世界中を旅行できる一方で、それ以外の人々はつい最近まで州境をまたいで愛する人と会うことにも苦慮していたのか。そして現在は、検査を受けて自分の病気を確認することも難しくなっているのか。

こうした問いがとりわけ鋭いものとなるのは、ある特定のスポーツ選手がその言動を通じ、ワクチン接種を直接否定する場合だ。つまりワクチンを接種すれば通常の生活に戻れるとの展望に異を唱えるケースである。

このままいくと、ジョコビッチ選手がコートに立ち、史上最多となる10度目の全豪オープン制覇に挑むとしても、声援のほとんどは同選手に向けたものではなくなる公算が大きい。

そして政府が選挙を実施しようとする際に願うのは、大半のオーストラリア人が直近の失態に目をつぶり、屈辱的な裁判所の命令を忘れてくれることだろう。世界で最も成功したスポーツ選手の一人を解放し、その費用も支払うように定めた、あの命令を。

本稿はCNNインターナショナルの特集記事担当デスク、ヒラリー・ホワイトマン氏による分析記事です。

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