人類はいつから服を着た? モロッコの洞窟での発見が手掛かりに

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洞窟への入り口/Contrebandiers Project

洞窟への入り口/Contrebandiers Project

衣服の使用がいつ始まったのかについて解明するのは簡単ではない。現生人類(ホモ・サピエンス)が到来するはるか前、寒冷な気候の下で暮らしていたネアンデルタール人などの古人類は、極端な気象から身を守るために衣服を身に着けていた可能性が高い。だが確かな証拠は少ない。

シラミの遺伝子研究では、アタマジラミの祖先からコロモジラミが少なくとも8万3000年前、早ければ17万年前に分岐したことが指摘されている。これはアフリカからの大移動以前に人類が衣服を着ていたことを示唆しているという。

ハレット博士は、イタリアで最近発見された、ゾウの骨から作られた40万年前の骨角器98点の一つが、皮なめしのために用いられた可能性があると指摘。この道具類を用いたのはネアンデルタール人である可能性が高い。穴があいた針が登場するのは考古学の記録上もっと後で、約4万年前となる。

モロッコ北東部フェスで動物の皮を炎天下で乾燥させる様子。今日でも皮を扱う労働者の中には骨の道具を使う人がいる/Emily Yuko Hallett
モロッコ北東部フェスで動物の皮を炎天下で乾燥させる様子。今日でも皮を扱う労働者の中には骨の道具を使う人がいる/Emily Yuko Hallett

モロッコでハレット博士が発見した骨格器はへらのような形をしていて、結合組織を剥がすのに使われていたとみられる。革を扱う現代の労働者でも似たような骨の道具を使う人がいるという。ハレット博士は「こうした道具を使うのは、これなら皮を突き破ることがないからだ。無傷の皮を残すことができる」と語る。

今回の骨角器類は、モロッコの大西洋岸に位置するコントラバンディエル洞窟で発見された。ハレット博士は、12万年前の当地の気候は現在と同じく温暖であることから、初期の衣服が身体の保護のほか、装飾のために使用された可能性があると指摘する。

「過去も現在も、極端な気温や気候条件は存在しないことから、衣服が完全に実用性だけなのか、または象徴的なものであったのか、もしくは両方の要素が少しずつあったのかを考えさせられる」と話した。

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