長期滞在の宇宙飛行士、脳が「圧搾」状態に 米研究

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長期滞在した宇宙飛行士の脳の画像。滞在前(左)と後で領域同士の空間が狭まっている

長期滞在した宇宙飛行士の脳の画像。滞在前(左)と後で領域同士の空間が狭まっている

長期滞在した宇宙飛行士18人のうち17人は、脳の中心溝が細くなっていた。短期滞在でこの現象が確認されたのは3人のみだった。脳内の重要な部分である中心溝は、動作の大半をつかさどる領域と、感覚的刺激をつかさどる領域を隔てている。

脳の上方移動は長期滞在者の12人で確認される一方、短期滞在者では皆無だった。

頭頂部の脳脊髄液空間が狭くなる現象が起きていたのは、長期滞在者のうち12人、短期滞在者では1人のみ。「滞在期間が長くなるほど悪化するのか、それともいずれ横ばいになるのかは分からない」とロバーツ氏。「地球に帰還した後もそうした構造的変化が持続するのか、それとも基準値に戻るのかを調べる必要がある」

さらに、長期滞在者のうち3人は、視覚障害頭蓋内圧症候群(VIIP)と呼ばれる症状を発症した。宇宙飛行士を引退したスコット・ケリー氏など40代後半から50代にかけての数人は、物の見え方がわずかに変化したと訴えている。「近くが見えにくくなる、老化のような現象が起きている」とNASAの研究者は解説する。

両眼と脳を結ぶ視神経のはたらきや、脳脊髄液の変化を組み合わせて考えると、両眼が圧力放出弁の役割を果たしているのではないかという説もある。ただ、それを実証するにはさらなる研究が必要だ。

VIIPを発症した宇宙飛行士は3人とも、脳の中心溝が狭くなっていた。

ロバーツ氏は言う。「我々の説は、長期滞在した宇宙飛行士の約60%で視力が低下し、約40%はVIIP症候群に分類されたというNASAの報告に基づいている」「画像ではほとんどの長期滞在者に変化が見られるのに対し、重度のVIIPを発症しているのは3人にとどまる。ほかの宇宙飛行士も程度の低いVIIPを発症している疑いはある」

NASAが計画している火星への有人飛行では、最大で片道9カ月かかる。このため視覚障害や脳の移動に関する理解を深め、対策を立てることが不可欠になる。

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