ミシュランガイドの歴史 タイヤ会社がなぜ一流レストランの格付けガイドになったのか

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1900年代のミシュランのガイドブック/Guenter Beer/VISUM/Redux

1900年代のミシュランのガイドブック/Guenter Beer/VISUM/Redux

星を維持するプレッシャー

星を獲得したレストランには、年間を通じて複数の調査員がたびたび訪れ、以前の評価がまだ有効か、より多くの星を獲得する価値があるか、以前の評価がもはや有効ではないかを判断する。

3番目だと判断された場合、レストランは以前に獲得した星を失う可能性がある。

たとえば、ニューヨークで最も有名なイタリア料理レストランの一つで、ジェイ・Zさんやキム・カーダシアンさん、オバマ元大統領などの著名なセレブが訪れたこともある「カルボーン」は、22年に唯一の星をはく奪された。とはいえ、今でも予約が困難なのに変わりはない。(カルボーンを所有するレストラングループ、メジャー・フード・グループからコメントは得られなかった)

予約が困難という点において、カルボーンは異例のようだ。シェフにとって、星を失うことは最大の痛手とみなされるだけでなく、客足を遠ざけることにもなる。シェフのケビン・ソーントン氏がアイルランドのダブリンに所有していたレストラン「ソーントンズ」は、二つ星を失った後に閉店した。

「ミシュランの星を失ったことは予期せぬショックだったが、長年の顧客やレストラン業界からの温かい支援によってショックは和らいだ」とソーントン氏は語っている。

同氏はCNNに対し、星を失っても売り上げに影響はなく、それが閉店を決めた唯一の理由ではないと説明した。だが16年にアイリッシュ・タイムズ紙は、レストランを運営していたコンテッド社から入手した記録を引用し、星を失ったことでレストランの利益が激減したと報じている。

ソーントン氏は現在、パートナーとともにプライベートダイニング事業を経営しており、自宅でゲストに料理をふるまったり、キッチンでマスタークラスを開いたりしている。

だが、星を失う危機にさらされていた2人の著名シェフが自殺して以来、ミシュランは「降格の場合は事前にシェフに通達し、レストランのチームがそのニュースを内々に整理する時間を設ける措置を取っている」とプーレネック氏は語った。

同氏はまた、ミシュランガイドの調査員は否定的な評価は一切下さないと付け加えた。「調査員は、レストランとその料理が良い、あるいは非常に良いという肯定的なコメントのみ提供する。我々は決して批判しないし、調査員は批評家ではない」

最初はフランスの飲食店だけを調査していたが、今では30カ国以上が対象となっている/Bobby Yip/Reuters
最初はフランスの飲食店だけを調査していたが、今では30カ国以上が対象となっている/Bobby Yip/Reuters

だからといって、星を維持したり、獲得したりするための業務が楽になるわけではない。

「現在、私はこうした生活を送っているので、一部のシェフが『こんなことは望んでいない』と言う理由が理解できる」とアルコサー氏は語っている。

ベランカ氏も、以前働いていたレストランで星を獲得後、星を維持するための仕事のストレスによって自身のパフォーマンスが低下したと話している。

同氏は瞑想(めいそう)など、絶え間ないストレスにうまく適応するための戦略を学んだ。だが、ミシュランの授賞式までの数日間(星を失う場合に事前通達される時期)はよく眠れないという。

「ミシュランの星を失うような男に私はなりたくない」(ベランカ氏)

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