世界を襲った巨大津波を解析、恐竜絶滅させた小惑星衝突の威力

巨大小惑星の衝突で発生した津波の威力を研究者チームがモデリングによって推測した/From Range et al

2022.10.05 Wed posted at 22:00 JST

(CNN) 6600万年前に地球に衝突した巨大小惑星は、恐竜を絶滅させ、世界中に押し寄せる大津波を発生させていた――。そんな研究結果が新たに発表された。

直径約14キロの小惑星はメキシコのユカタン半島付近に落下して、全長約100キロのクレーターを残した。この影響で恐竜だけでなく、当時地球上に生息していた動植物の75%が絶滅した。

小惑星の衝突は壊滅的な連鎖反応を引き起こした。世界の気温は変動し、大気には噴霧や粉塵(ふんじん)が充満し、衝撃で吹き飛ばされた物質の断片が炎を上げながら降り注いで山火事が発生した。48時間以内に津波が世界を襲った。その威力は地震によって起きる現代の津波の数千倍に達していた。

米ミシガン大学などの研究チームはこの津波について詳しく解明するため、モデリングによって到達状況を推測。世界各地で過去に採取された120の海底堆積(たいせき)物コアを調べることで、津波の経路と威力に関する説を裏付ける証拠を発見した。

この研究は4日の米地球物理学会誌に発表された。研究チームによると、恐竜を絶滅させた「チクシュルーブ」と呼ばれる小惑星衝突で発生した津波について、世界的シミュレーションが論文審査のある学術誌に発表されたのは初めて。

論文によると、津波の高さは1.6キロを超え、小惑星の衝突場所から何千キロも離れた海底がえぐられた。このため、衝突前と衝突の際に堆積物に残された記録は、実質的にかき消された。

研究チームの推計によれば、この津波の威力は、2004年12月26日にインド洋で発生し、23万人以上の命を奪った津波に比べ、最大で3万倍に達した。小惑星衝突の威力は、今年トンガで起きた火山噴火の10万倍以上だった。

米パデュー大学のブランドン・ジョンソン准教授は、ハイドロコードと呼ばれる大型コンピュータープログラムを使って、チクシュルーブ衝突から10分の間に起きたクレーターの形成や津波発生などの出来事をシミュレーションした。

津波は衝突から4時間後には中央アメリカ海路を抜けて太平洋に到達した

小惑星は、推定時速4万3200キロの速度で花崗岩(かこうがん)でできたユカタン半島の浅瀬に落下。3分もたたないうちに、岩石や堆積物などの破片に押し上げられて落下地点から水の壁が押し寄せ、高さ4.5キロの大波になった。この波は、吹き飛んだ破片が地上に落下すると弱まった。

しかし落下した破片はさらに破壊的な波を発生させた。

小惑星の衝突から10分後、高さ1.6キロほどの環状の波が、衝突場所から220キロ離れた地点を中心に、全方向へ向かって海上で広がり始めた。

衝突から1時間後、津波はメキシコ湾を越えて北大西洋に到達。4時間後には、かつて北米と南米を隔てていた中央アメリカ海路を抜けて太平洋に入った。

24時間後、津波は太平洋と大西洋を横断して両方向からインド洋に到達し、48時間後までには地球上の沿岸部の大部分を大津波が襲った。

海底の潮流は北大西洋、中央アメリカ海路、南太平洋で最も強く、時速643メートルを超える威力で海底の堆積物を吹き飛ばした。

一方、インド洋、北太平洋、南大西洋、地中海は最悪の津波を免れ、海底潮流も少なかった。

研究チームは沿岸部を襲った津波の威力については推定していない。しかし同モデルによると、北大西洋の沿岸と南米の太平洋に面した沿岸には、高さ10メートル以上の波が押し寄せていた。岸に近付くほど波は高くなり、洪水や浸食を引き起こした。

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