(CNN) 米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)製の新型コロナウイルスワクチンと血栓症の関連をめぐる懸念に対し、「血栓はすべてのワクチンで報告されている」と主張した同社の声明が批判を受けている。
J&J製のワクチンについては、これまでに接種を受けた700万人あまりのうち、少なくとも7人がまれな脳血栓症を発症したとの報告がある。
欧州医薬品庁(EMA)は9日、J&J製ワクチンの接種後に起きた血栓症の事例を調べていると発表。これに対してJ&Jは同日、メディアへの声明を出し、脚注付きで「血小板の減少をともなう症例を含めた血栓症は、すべての新型ウイルスワクチンで報告されている」との認識を示した。
脚注には参照先として、米コーネル大学医学部のウンジュ・リー博士らが今年2月の血液学専門誌に発表した論文が挙げられていた。
この論文は米食品医薬品局(FDA)のデータを基に、米ファイザーとモデルナのワクチンを接種した後に起きた有害事象を検討。血小板減少の報告が17件あったと指摘したが、血栓症には言及していなかった。
血小板減少については、ワクチン以外にも妊娠や過度の飲酒、がん、ウイルス感染など多くの原因が考えられる。リー博士らは、数千万人が接種を受けたことを考えれば意外な件数ではないとの見解を示していた。
リー博士は「私たちの研究で血栓症は見つからなかった」と語り、血小板減少と血栓はまったく別物だと強調した。
ワクチンや感染症の専門家らは、J&Jの声明を「極めて無責任」と批判している。
J&Jは声明で、同じく少数のまれな脳血栓症が報告されている英アストラゼネカ製ワクチンに関する論文も参照していた。
ファイザー製とモデルナ製はともに抗原の「鋳型」となる「メッセンジャーRNA(mRNA)」を投与するワクチンで、J&J製とアストラゼネカ製は無害なアデノウイルスに特定の遺伝子を組み込んだ「ウイルスベクター」ワクチン。
米国ではこのうち、アストラゼネカ製を除く3種類にFDAの緊急使用許可が出たが、J&J製は血栓の報告を受けて接種が中止されている。
CDCは2月13日までの監視結果として、ファイザー、モデルナ製のワクチンを接種した後で特定の血栓症や血小板減少症が増えたとの報告はないと発表していた。
米紙ウォールストリート・ジャーナルは先週、事情に詳しい関係者らの話として、J&Jが血栓の症例についての調査でファイザーとモデルナに協力を求めたが、両社は拒否したと伝えた。アストラゼネカは協力に同意したとされる。