原因不明のウイルス性肺炎、中国・武漢で感染者続出 新型ウイルスか

鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)から身を守るため、マスクをして歩く女性たち。今回の流行については鳥インフルエンザの可能性は排除されたという=2013年、上海/Mark Ralston/AFP/Getty Images

2020.01.07 Tue posted at 11:58 JST

(CNN) 中国中部の湖北省武漢市で、原因不明のウイルス性肺炎の感染者が続出し、アジアの周辺国や地域が警戒を強めている。当局は、かつて多数の死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の再燃の可能性は否定した。

武漢市の衛生当局によると、同市ではこれまでに、原因不明のウイルス性肺炎に感染した症例が59例報告された。うち7人は重体になっており、全員が隔離治療を受けている。死者が出たという報告は入っていない。

世界保健機関(WHO)によると、この肺炎に感染すると主に発熱の症状が出て、多くの患者が呼吸困難を訴え、胸部のX線検査では両方の肺に病変がみられる。

今回の流行は12月下旬に明るみに出て、SARSの再来ではないかという不安が強まった。SARSは2002年に中国で初の症例が報告され、アジア全域でパンデミック(世界的な大流行)を引き起こした。

しかし武漢の当局は5日、今回の症例について、SARSや中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザの可能性は排除されたと発表した。

武漢の当局によれば、ウイルス感染は昨年12月12日~29日にかけて発生。患者の中には市内の海産物市場の従業員が複数含まれるという。

同市場は消毒のため、今年1月1日から閉鎖された。地元メディアによれば、この市場では鳥類やウサギ、ヘビなど生きた動物も販売されていたといい、動物から人にウイルスが感染した可能性もあるとして不安が強まっている。

MERS対策の一環で香港空港で発熱検査を受ける旅行客=2015年

呼吸器疾患に詳しい香港中文大学の専門家は今回の流行について、「新型のウイルス性肺炎」によって引き起こされた可能性が極めて高いと指摘、市場で売られていた動物が感染拡大の一因になったかどうかが懸念されると語った。

この専門家によれば、新型の病原菌の多くは動物から人に感染している。SARSの原因となるコロナウイルスは、最初の症例が確認された中国南部に生息するハクビシン(ジャコウネコ科)から見つかっている。MERSはヒトコブラクダが感染源だった可能性が大きいと考えられているという。

当局によると、これまでのところ人から人への感染を裏付ける確固たる証拠は見つかっておらず、医療関係者の感染も確認されていない。それでも感染者と接触があった少なくとも163人については経過観察を続けている。

中国では25日からの旧正月を控え、感染拡大の不安も強まっている。この季節は帰省客らで公共交通機関が大混雑するほか、海外旅行に出かける人も増える。

武漢での流行を受け、アジアの国や地域も警戒態勢を強めている。香港、シンガポール、韓国、台湾などは、空港での発熱検査を実施したり、渡航者に注意を呼びかけるなどの対策に乗り出した。

WHOは5日、「因果関係が分からない肺炎の集団感染の報告について、全般的なリスクを判断するための情報は限られている」と述べ、渡航者への具体的な措置は勧告しないと説明、現在の情報に基づく中国への渡航規制や貿易規制は適用しないことが望ましいとした。

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