偽ニュース対策法を審議へ、検閲に懸念 マレーシア

マレーシアのナジブ首相。偽ニュース対策法案の審議が進められている

2018.04.01 Sun posted at 16:26 JST

(CNN) マレーシア政府は4月1日までに、フェイク(偽)ニュースの創出や流布などを取り締まる広範な権限を政府に付与する法案を議会に提出した。ナジブ首相率いる与党連合は議会で多数派のため今週内の法案可決は確実視されている。

同国では近く総選挙が予想され、ナジブ首相はここ数年、国営基金が絡む巨額の公金流用疑惑に襲われている。このためナジブ政権の今回の動きの真意を疑問視する声が地元メディアや法曹団体、一般市民らの間で多く出ている。

法務担当だった元閣僚は選挙対策の手段と首相を指弾し、批判勢力を封殺し公共流用疑惑 の余波から自らを守るための手立てと主張している。

法案の中の罰則内容は最大で禁錮6年に最高で13万米ドル(約1378万円)相当の罰金。ただ、偽ニュースの意味付けや違反行為の実行者の選別などに関する定義が広範囲に及び政権の恣意的な解釈が可能になるとの懸念につながっている。

法案で偽ニュースは一部でも虚偽の内容が含まれたニュース、情報、データや報告などと位置付けられた。違反者は知りながら偽ニュースを流布したり、出版した人物などとした。

法案の対象はマレーシアもしくはマレーシア国民に関する偽ニュースと規定。国際メディアも違反者をマレーシア人とマレーシア国内の人物としたことを危惧している。

一方、法務担当だった元閣僚は法案は選挙対策の手段と首相を指弾し、批判勢力を封殺し公金流用疑惑の余波から自らを守るための手立てと主張。マレーシア弁護士会の会長は偽ニュースのあいまいな定義を指摘し、表現の自由に抵触する恐れがあるとして撤回を要求した。

首相の顔をピエロに見立てて抗議を行う人々

同会長はまた、マレーシア政府はメディアや個人の自由を規制出来る国内保安法などを含む多くの法律を既に手にしているとも指摘。裁判なしの逮捕権なども有しており、今回の新たな法案提出の必要性はないとも説明した。

トランプ米大統領が多用し始めて以来、偽ニュースの言葉は東南アジア諸国の政府当局からも聞かれるようになった。ミャンマー政府当局者は国際メディアが報道するイスラム系少数派民族ロヒンギャの国外避難問題で使ったし、フィリピンのドゥテルテ大統領は政権批判の急先鋒であるジャーナリストにこの言葉を浴びせた。

カンボジアのフン・セン首相も地元メディアをこき下ろすのに用い、シンガポールでは虚偽のオンラインニュース対策として議会特別委員会を設けて法案作成を準備している。

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