9・11以来のイスラム憎悪を懸念、米で相次ぐ暴行や脅迫にパレスチナ系の不安増大

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シカゴの自宅で刺殺された6歳のパレスチナ系米国人男児の葬儀で祈りを捧げる人々/Kamil Krzaczynski/Getty Images

シカゴの自宅で刺殺された6歳のパレスチナ系米国人男児の葬儀で祈りを捧げる人々/Kamil Krzaczynski/Getty Images

(CNN) イスラエルとパレスチナ自治区ガザのイスラム勢力ハマスの戦闘が続き、ガザ地区の窮状が深まる中で、タヘル・ヘルザラーさんはガザに閉じ込められた家族と必死の思いで連絡を取り合っている。

ヘルザラーさんの家族は食料も電気も水も燃料もないと訴えているという。

「この前話した時は『もうこれまでだと思う。今回は助からない』と言っていた」とヘルザラーさんは話す。「自分の家族からそんな話を聞かされるパレスチナ系米国人がどんな思いでいるか、想像してほしい」

ガザの家族を案じると同時に、米国で暮らす妻や子どもたちの身の安全が脅かされる不安も増大している。米国では、イスラム教徒やパレスチナ人とみなされた人に対する襲撃が全土で報告されている。

16日には、シカゴ市内の自宅で14日に刺殺された6歳のパレスチナ系米国人男児の葬儀がイリノイ州のモスクで営まれた。警察は今回の事件について、イスラム憎悪のヘイトクライム(憎悪犯罪)だったと見ている。男児の母親も重傷を負って今も入院している。

イスラム教団体幹部のアフメド・レハブさんは「最悪の悪夢が現実になった」と話す。「あの人物が言った『おまえたちイスラム教徒は死ななければならない』という言葉は、この少年と母親ではなく、我々全員に向けられた。あの日、我々全員が刺された」

イスラム教やアラブ系、パレスチナ系米国人の団体は、ハマスの奇襲攻撃以来、破壊行為や学校および職場でのいじめ、脅迫電話などの被害に遭ったという報告が増えていると訴える。

パレスチナ系米国人の公民権運動家、リンダ・サルスールさんは、パレスチナのヨルダン川西岸にいる家族のこと以上に、米国にいる自分たち自身のことを心配していると打ち明けた。

「何よりも悲しいのは、1人で外出しない方がいいとお互いに言い始めたこと」とサルスールさんは言い、身の回りに気を付けるよう互いに注意し合っていると告白。「私たちは大きな苦悩、大きな恐怖、安全の欠如を感じている」と言い添えた。

ニューヨーク市ではバスの中でターバンとマスクを着けていた19歳の乗客が殴られる事件があり、警察が市民に情報提供を呼びかけて容疑者の行方を追っている。容疑者は男性のターバンをはぎ取ろうとしていたという目撃証言があることから、警察はヘイトクライム疑いで捜査している。

人口の約42%がアラブ系と推定されるミシガン州ディアボーンの警察は、パレスチナ系米国人の住民らに暴行を加えるとネットで脅迫した容疑で男を逮捕した。

「パレスチナ系米国人とイスラム教の米国人は、9・11同時テロ後とイラク戦争の間に存在していたような憎悪やイスラム憎悪を感じている。今回の方が悪いという人もいる」。パレスチナ人権団体のアベール・カワズさんはそう語った。

パレスチナ支持者の誰もがハマスを支持し、イスラエルに対する暴力的な攻撃を支持しているかのように思わせる伝えられ方に問題があると指摘するのは、差別に反対するアラブ系米国人団体のアベド・アユーブ代表。「攻撃を正当化するためだけに、誰もがハマスだと決めつけるのは危険だ。だがそれが起きる状況を我々は目の当たりにしている」と指摘する。

先の週末には、イスラエルがガザでハマスに対する報復の空爆を続ける中で、ニューヨーク市の繁華街タイムズスクエアなど米国各地で活動家がパレスチナ支持の集会を開いた。

イスラム系やアラブ系指導者の多くは、これ以上の暴力を食い止めるため、イスラム憎悪の風潮に対する抗議の声を上げなければならないと話している。

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