トランプ氏の一般教書演説、5つのポイント 党派対立浮き彫りに
(CNN) トランプ米大統領は米東部時間の4日夜、上下両院合同会議で一般教書演説を行った。上院で同氏のウクライナ疑惑をめぐる弾劾(だんがい)裁判が開かれ、野党・民主党が大統領選に向けたアイオワ州党員集会の集計に手間取るなかでの演説となった。
トランプ氏の演説は、選挙集会やツイッターでの奔放な発言とは一線を画した原稿通りの内容で、政権発足から3年間の実績に重点が置かれていた。注目すべきポイントを5つ挙げる。
1.党派分断が浮き彫りに
この日に発表されたギャラップ社の世論調査によると、トランプ氏の支持率は与党・共和党と民主党支持者の間で84ポイントも差がついているという。議会や国全体を分断する溝の深さは、演説中のあらゆる場面に表れていた。
トランプ氏は演説を始める前、民主党のペロシ下院議長が握手に差し出した手を無視した。両氏はこの数カ月、口もきいていないと伝えられる。
ペロシ氏は演説中、トランプ氏が自身の医療保険制度改革案に言及した部分などで何度か、かすかに首を横に振っていた。トランプ氏に対し、民主党議員らが声を合わせて異議を唱える場面もあった。
演説が終わった瞬間に、ペロシ氏は手元に配られていたトランプ氏の演説原稿を真っ二つに破いてみせた。
2.テーマは経済一色
トランプ氏は再選に向けた選挙戦を予告するかのように、冒頭から経済面の実績を強調し、「偉大な米国の復活」を宣言。「国家の現状は過去最強だ」と胸を張った。
その具体的な裏付けとして、政権発足以来の株価上昇や黒人と中南米系の失業率改善など、これまでに挙げてきた統計の数字を繰り返した。ただしCNNの記者によれば、その多くは大幅に誇張されている。
トランプ氏が経済に焦点を当てたのは利口な選択だったといえる。世論調査では常に、同氏の経済政策が支持される半面、移民、外交政策に対しては批判的な声が目立つからだ。
経済をテーマにした演説の目的はどこにあったか。共和党議員から上がった「あと4年」の掛け声が、それをはっきりと示していた
3.ドラマチックな演出
歴代大統領の一般教書演説にドラマチックな演出はつきものとされてきたが、トランプ氏は劇的なうえに挑発的な演出を好む。この日の演説にも、両方の要素をしっかりと盛り込んでいた。
トランプ氏は演説の中で、数日前に進行肺がんを公表したばかりの保守系ラジオ司会者、ラッシュ・リンボー氏に、米国の民間人を対象とする最高位の「大統領自由勲章」を授与すると発表。傍聴席にいたリンボー氏の首に、隣からメラニア夫人がメダルをかけた。
過激な発言で知られる論客の受章に、民主党議員からは「ノー」の声が上がった。
さらに演説の終盤では、長年アフガニスタンに派遣されていた米兵を妻子のもとへ帰すというサプライズも演出した。
4.野党には終始けんか腰
民主党に対しては手を差し伸べたり、意見を取り入れたりする姿勢を一切見せることなく、けんか腰の発言に終始した。
国民皆保険制度の法案に賛成した民主党議員らを厳しく攻撃し、「社会主義に医療保険を支配させることは決してない」と声を張り上げた。
民主党は不法移民に医療保険制度への「ただ乗り」を認めようとしていると非難し、「それがフェアだと思うなら急進左派の味方になればいい。米国人の患者や高齢者を守るべきだと思う人は私につきなさい」と呼び掛けた。
5.「インフラ週間」、再び?
超党派の話題がほとんど見当たらなかった演説のなかで、トランプ氏が国内インフラの再構築に言及し、両党の議員が立ち上がってしばらく拍手したことは注目に値するだろう。
トランプ氏はこれまでに何度か、政権の問題から有権者の目をそらすようなタイミングで唐突に「インフラ週間」を宣言し、インフラ整備というテーマを前面に押し出してきた。いずれも具体的な進展には至らず空振りに終わったが、もしも毎週が「インフラ週間」なら、党派を超えた政策の議論が少しは期待できるかもしれない。