聖職者の説教も「チャットGPT」で? 扱いに戸惑う宗教指導者

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対話型AI(人工知能)で作成された説教には「魂がない」との指摘も/Adobe Stock

対話型AI(人工知能)で作成された説教には「魂がない」との指摘も/Adobe Stock

(CNN) 簡単な質問を入力するだけで説得力のある文章を作成してくれるAI言語学習モデルの「チャットGPT」。キリスト教からユダヤ教まで、あらゆる宗教に欠かせない説教の原稿書きもこなせることが分かってきた。

そうした説教の言葉は歴史的に、何世代にもわたる知識や学識、文脈の解釈、それぞれの宗教指導者独特のカリスマ性や経験が組み合わさって構成されてきた。説教は芸術であり、神の声とさえみなされる。

それにほぼ匹敵する内容をわずか数秒で生成できるコンピューターを目の当たりにした宗教指導者は、「真に人間的、宗教的メッセージをAIが再現できるのか」という興味深い問題を突きつけられている。もしできるとすれば、単純にコンピューターに任せておけばいいのか、それとも人がある程度手を入れる必要はあるのだろうか。

ユダヤ教指導者のジュシュア・フランクリン師は2022年12月、ニューヨーク州イーストハンプトンの会堂で行った説教で、「私はこれから説教を盗用する」「誰が執筆したのか推測してほしい」と信者らに語りかけた。

続いてフランクリン師は、ユダヤ教の教え「トーラー」の中で兄弟間の和解について物語った一節に触れ、「これは私たち全てにとっての力強い教訓です。たとえ困難な時であっても、親しい関係を築くため、進んで相手に歩み寄ることの大切さを表しているからです」と説いた。

フランクリン師はおよそ2分にわたった説教の終わりに、ところどころでざわめきや拍手を誘ったこの原稿の真の作者がチャットGPTだったことを明かした。

「皆さんは拍手していた」「しかし私は恐怖を感じた」とフランクリン師は語る。

チャットGPTには非常に細かい指示を与え、できた原稿の細部には熟練の学者に対しては通用しないと思われる部分もあったとしながらも、この実験は同時に畏怖(いふ)と恐怖を持って受け止められたとフランクリン師は振り返った。人の経験とあまりにも密接に結びついた宗教指導者の仕事は、いずれコンピューターに取って代わられるのか。

AIが作り出す未来では、コンピューターが意識や倫理感や魂を持ち、やがて人間性を持つようになることを人間は恐れる。しかし現実には、チャットGPTのようなAIツールは単純に説得力のあるまねをしているにすぎない。

しかし、いずれは人間的な答えが出せるようになり、宗教的な悟りを期待する聴衆を満足させることも可能になるかもしれない。

それでもまだ欠けているものがあると専門家は言う。

「これは魂を欠いている。ほかに何と言えばいいのか分からない」。牧師で神学教授のハーシェル・ヨーク氏はAP通信にそう語った。

だが、チャットGPTは膨大な量の文章を読ませて学習させることができるため、聖典を引用した学者の説教を瞬時に作成することが可能だ。

キリスト教の説教用にどんな文言を引用するかと尋ねると、チャットGPTは当初、自分はAI言語モデルなので「個人的な信仰や宗教はもたない」としてためらいを見せていたが、質問を少し変えると以下のような答えが返ってきた。

「チャットGPTのような言語モデルにキリスト教の説教を作成するよう求めると、一般的には学習データとキリスト教の神学および実践に関する知識に頼る。これには聖書、解説書、神学書、他の牧師による説教本など幅広いキリスト教の文章が含まれる」

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