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クレオパトラの墓につながるトンネルか エジプト神殿の地下で発見

クレオパトラの墓は、エジプトのタポシリス・マグナの神殿にあると考えられている

クレオパトラの墓は、エジプトのタポシリス・マグナの神殿にあると考えられている/Khaled El-Fiqi/EPA/Shutterstock

サントドミンゴ大学の考古学者キャスリーン・マルティネス氏は20年近くにわたり、失われたクレオパトラの墓を探し続けてきた。そして今、その転機となる突破口を見つけたと確信している。

エジプト観光・考古省はこのほど、マルティネス氏のチームが深さ13メートルの地下にある全長1305メートルのトンネルを発掘したと発表した。建築設計の専門家は「工学的な奇跡」と形容している。

「今回の発掘では、3つの聖域をもつ巨大な宗教施設と、聖なる泉、1500点以上の遺物、胸像、彫像、黄金の断片、アレクサンダー大王とクレオパトラ女王およびプトレマイオスを描いた大量の硬貨が見つかった」。マルティネス氏はCNNにそう語った。

キャスリーン・マルティネス氏は失われた墓につながる可能性のあるトンネルを発掘した/Kathleen Martinez-Nazar/Taposiris Magna Project
キャスリーン・マルティネス氏は失われた墓につながる可能性のあるトンネルを発掘した/Kathleen Martinez-Nazar/Taposiris Magna Project

「最も興味深い発見は、地中海と沈んだ構造物につながる入り組んだトンネル群だった」とマルティネス氏は言う。同氏はエジプト女王の失われた墓を求め、次の段階としてこの地下の構造物の調査に当たる。この探求が始まったのは2005年だった。

「私の忍耐強さを執念と混同しないでほしい。私はクレオパトラを歴史上の人物として尊敬している。彼女はそのイメージをゆがめることを狙ったローマ人によるプロパガンダの犠牲者だった」(マルティネス氏)

「彼女は教養のある女性だった。恐らく当時の文化の中心地だったアレクサンドリアの博物館で正式に学んだ初めての人物だった」と話すマルティネス氏は、クレオパトラを学生として、言語学者として、母親として、そして哲学者として尊敬しているという。

定説によると、ローマの将軍だった夫のマーク・アントニーが紀元前30年に自分の腕の中で息を引き取ると、間もなくクレオパトラもコブラに自分をかませて後を追った。この説は、その瞬間を描いた絵画や文学で不動になった。だがそれから2000年以上たった今も、2人が眠る場所についてはほとんど分かっていない。

1963年公開の映画「クレオパトラ」では、エリザベス・テイラーがクレオパトラ役、リチャード・バートンがローマの将軍だった夫のマーク・アントニー役で登場/Twentieth Century Fox
1963年公開の映画「クレオパトラ」では、エリザベス・テイラーがクレオパトラ役、リチャード・バートンがローマの将軍だった夫のマーク・アントニー役で登場/Twentieth Century Fox

マルティネス氏は手がかりをたどって、クレオパトラの墓がタポシリス・マグナ遺跡のオシリス神殿にあるかもしれないと考えた。同神殿はエジプト北部沿岸の、ナイル川が地中海に注ぎ込む地点にある。

主な理由はその名称そのものにある。マルティネス氏によると、クレオパトラは当時、「女神イシスが人間に生まれ変わった存在」と考えられ、アントニーはオシリス神の生まれ変わりと考えられていた。

クレオパトラはこの神話を反映した墓に夫を埋葬することを選んだ可能性があるとマルティネスは考える。アレクサンドリア周辺で同氏が調べた全20神殿の中で、「タポシリス・マグナの神殿ほど多くの条件を兼ね備えている場所、構造物、神殿はほかにない」という。

これまでの発掘調査で1500を超える古代の遺物が発掘されている/Egyptian Ministry of Tourism
これまでの発掘調査で1500を超える古代の遺物が発掘されている/Egyptian Ministry of Tourism

04年、マルティネス氏は、当時の考古学担当相だったザヒ・ハワス氏に自身の説を持ち込み、同氏のプロジェクトは翌年、許可された。

長年の調査を経てマルティネス氏は、自分が近づきつつあることを実感している。

これまでの発掘調査の結果、「この寺院がイシスにささげられたものだった」こと(マルティネス氏の考えでは、失われた墓が近くにあることを示す新たな手がかり)と、海底のトンネルがみつかった。

失われた墓の捜索のためマルティネス氏らは地中海の海底で調査を行った/Kathleen Martinez-Nazar/Taposiris Magna Project
失われた墓の捜索のためマルティネス氏らは地中海の海底で調査を行った/Kathleen Martinez-Nazar/Taposiris Magna Project

マルティネス氏は今、海底の発掘調査という「新たな旅の始まり」の段階にあると語る。

観光・考古省の発表によると、エジプトの沿岸部は何世紀にもわたって何度も地震に襲われ、タポリス・マグナは一部が崩壊して波の下に沈んでいる。

マルティネス氏のチームが次に調査するのはその場所だ。「こうしたトンネルがどこへつながっているのか、判断するのはまだ時期尚早」だとしながらも、同氏の期待は高まる。

もし、トンネル群がクレオパトラにつながれば、「今世紀で最も重要な発見になる」とマルティネス氏は話している。

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