ベネチア(CNN) それは今年世間で最も注目を集め、最も秘密に包まれた結婚式だった。
27日、ベネチアで3日間続いたジェフ・ベゾス氏とローレン・サンチェス氏の豪華挙式が最高潮を迎えた。非公開の式が執り行われた場所は、サン・マルコ地区にひっそり浮かぶ歴史的なサン・ジョルジョ・マッジョーレ島。午後には、招待客のリストに名を連ねたカーダシアン&ジェンナー家の面々やビル・ゲイツ氏、カーリー・クロス氏、オプラ・ウィンフリー氏、アッシャー氏ら約200人が全員、祝宴へ向かう水上タクシーに乗り込む様子が撮影されたものの、姿を確認できたのはそこまでだった。ひとたび週末のイベントの会場に入ると、招待客らはSNS禁止のルールを守っていたようだった。
式は静かに幕を閉じたが、ファッション界からのシグナルは例外だった。デジタル版ヴォーグのトップで、サンチェス氏のドレス姿が初公開されたのだ。多くの臆測を呼んでいた(そしてベネチアではデザイナーのドメニコ・ドルチェ氏の姿も目立っていた)ドレスだが、ドルチェ&ガッバーナが1年半かけて手掛けた特注デザインだったことが判明した。レース仕立てのハイネックのコルセットドレスには、シルクシフォンで覆った聖職者風のボタン180個が正面に並べられていた。
ヴォーグ誌によると、夜が更けるにつれ、サンチェス氏はさらに2度の衣装替えを行った。ウェディングディナーではスイートハートネックのドレス(今度は1946年の映画「ギルダ」へのオマージュだ)に着替え、続いて17万5000個のクリスタルをあしらったオスカー・デ・ラ・レンタの精巧なカクテルドレスをまとった。
サン・ジョルジョ・マッジョーレ島は、イタリアの建築家アンドレア・パッラーディオが設計した、大理石の輝くルネサンス期のバシリカ建築で知られる。だが、新郎新婦がこの島を選んだのはもっと現実的な理由、プライバシーの確保もあったかもしれない。
ベネチアでは運河封鎖の脅しやゲリラ的に設置される横断幕、ベゾス氏そっくりの不気味なマネキンなどによる抗議行動が続き、サンチェス氏とベゾス氏は土壇場で週末の会場を変更せざるを得なかった。報道によると、サン・ジョルジョ・マッジョーレを選んだ決め手は、島の警備体制と外部からのアクセスの難しさだったようだ。ベネチア観光当局の試算では、今回の祝宴だけで市の年間観光収入の68%近い経済効果を生むとされるが、デモ隊は世界の大富豪による美しいベネチアの乗っ取りとみなし、抗議の声を上げている。

結婚式の出席者がサン・ジョルジョ・マッジョーレまでボートで運ばれる様子/Yara Nardi/Reuters
式では、米アマゾンの創業者で富豪のベゾス氏と元ジャーナリストのサンチェス氏が象徴的な指輪交換を行ったとみられる。2人の結婚が法的に成立した時期は不明だ(今週以前に米国で手続きを済ませていたのかどうかも分かっていない)。ベネチア市長室の広報は26日のCNNの取材に対し、公式な申請は受けていないと明かした。つまり、今週のイベントは形式的なもので、法的拘束力は持たないということだ。
ヴォーグ誌の写真公開から間もなく、サンチェス氏はインスタグラムのアカウント名を「ローレン・サンチェス・ベゾス」に変更した。
豪華な顔ぶれのお祭り騒ぎ
祝宴に先立ち、サンチェス氏はディオールの60年代風の白い特注スカートスーツに身を包み、頭にはオードリー・ヘプバーン風のシルクプリントのスカーフ、ジミー・チュウのヒールにエルメスの「ケリー」バッグという装いでサン・ジョルジョ・マッジョーレ島へ向かった。水上タクシーに乗り込む際には、カメラマンに投げキスを贈ってみせた。
招待客らは週末を通じ、ビンテージのロベルト・カヴァリやドルチェ&ガッバーナ、オスカー・デ・ラ・レンタ、ヴェルサーチェなど多彩な高級デザイナー服をまとって交流にいそしんだ。サン・ジョルジョ・マッジョーレ島へ向かう道中、カイリー・ジェンナー氏は淡いブルーの編み上げコルセットガウン、キム・カーダシアン氏は洗練されたダークトフィーカラーのドレス、オプラ氏はひだ付きのぴったりしたピンクのドレスを着用した。

クロエ・カーダシアン(左)とキム・カーダシアンが結婚式を前にホテルを出る様子/Antonio Calanni/AP

ベネチアで撮影されたシドニー・スウィーニーの写真/SGP/Shutterstock

祝宴2日前にホテルを出るオプラ・ウィンフリー氏=27日/Manuel Silvestri/Reuters
演奏者の詳細は他の多くの部分と同様、おおむね伏せられているが、イタリアメディアの報道では、名テノールとして尊敬を集めるアンドレア・ボチェッリ氏の息子、マッテオ・ボチェッリ氏がエルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」を歌って夜の幕が開けたようだ。アンドレア氏は2014年と22年、キム・カーダシアン、コートニー・カーダシアン姉妹のそれぞれの結婚式でパフォーマンスを披露している。
ボチェッリ氏の歌に涙したゲストも、夜は間違いなくパーティー気分だろう。フィナーレは改修を経てカルチャースペースが加わったベネチアの中世の造船所「アルセナーレ」で開かれる。ここはベネチア・ビエンナーレの会場にもなる。