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英国の素人トレジャーハンター、ヘンリー8世ゆかりの金のペンダントを発見

金属探知機を使った探索で発見されたイングランド王ヘンリー8世のペンダント

金属探知機を使った探索で発見されたイングランド王ヘンリー8世のペンダント/The Trustees of the British Museum

その発見が持つ意味のあまりの重大さに、見つけた当の本人であるアマチュアのディテクトリスト(金属探知機を使ってコインや貴金属などを探す人)は言葉を失った。そしてその謎を解き明かした専門家は、2年間を研究に費やした。

チャーリー・クラーク氏は、2019年に英イングランド・ウェストミッドランズ州のウォリックシャーで金のペンダントを発見した。金属探知機を使った宝探しを始めてわずか半年のことだった。

そのペンダントには、チューダー朝の王ヘンリー8世と彼の最初の妻キャサリン・オブ・アラゴンのシンボルが描かれていた。エナメル加工が施されている手の形をしたサスペンションリンクで、75個の輪から構成されるチェーンに取り付けられている。ヘンリー8世には6人の妻がいたが、最初の妻であるキャサリンとは1509年に結婚した。

クラーク氏は2月1日のCNNとのインタビューで「とにかく(そのペンダントの美しさは)際立っていた」と述べ、さらに「こんな貴重な品を発見できるなんて誰も想像できない。特に私の人生ではありえない。人生を30回生きないと無理だろう」と付け加えた。

ペンダントの重さは300グラムで、ペンダントトップはハート形をしている。片面には同じ枝から伸びているザクロの茂みと絡み合ったチューダーローズが描かれ、裏面にはヘンリーとキャサリンの頭文字であるHとKの文字を結んだシンボルマークが描かれている。

また両面の下の方に「TOVS」と「IORS」という2つの文字列が並んで刻まれている。これはフランス語で「いつも」や「いつまでも」を意味する「toujours」をもじったものだ。

ザクロの茂みはキャサリン・オブ・アラゴンを、チューダーローズはヘンリー8世をそれぞれ象徴する
ザクロの茂みはキャサリン・オブ・アラゴンを、チューダーローズはヘンリー8世をそれぞれ象徴する

ペンダントを発見した当時、まだ金属探知機を使い始めて日が浅かったクラーク氏は、バーミンガムにある金属探知機の専門店レグトンの専門家に相談し、大英博物館と検視官にペンダントを発見したことを通知した。

大英博物館でルネサンス期の欧州担当の学芸員を務めるレイチェル・キング氏は2月1日のCNNとのインタビューで、この「一世一代の大発見」について知らされた時、思わず座り込んだと語った。

キング氏は当時の心境について、「これは何? 本当なの?」と思ったという。さらに「(ペンダントが)19世紀の品かもしれないし、単なる模造宝飾品かもしれない。その意味で、自分にとって大きな試練だった」と付け加えた。

ペンダントが届くと、大英博物館はそれが本当にチューダー朝時代のペンダントか、それとも単なる模造品かを見極めるため、科学的分析を行った。

そして複数回実施されたうちの一つの分析結果から、このペンダントが1530年より前に作られたことが判明した(偽造を可能にする情報の提供を避けるため、キング氏は分析の詳細は明かさなかった)。

ロンドンの大英博物館に展示されたペンダントを見るチャーリー・クラーク氏(左)
ロンドンの大英博物館に展示されたペンダントを見るチャーリー・クラーク氏(左)

キング氏とその研究チームは、このペンダントと同じ模様やデザインが他の発見物にも見られること、またペンダントの一部が急いで作られたように見えることに気付き、このペンダントはヘンリー8世と彼の妻のために作られたものではなく、ヘンリー8世が大好きで、頻繁に開催していたトーナメント(馬上槍試合の競技会)やジョスト(騎士の一騎討ち競技)の賞品として使用されたか、あるいは参加者が衣装の一部として身に着けていた可能性がある、という仮説を立てた。

キング氏は「このペンダントは、まるで空から降ってきたかのように地中から掘り出されたばかりだ」と述べ、さらに次のように続けた。

「我々は、長い間人々が行ってきた分類作業の対象から漏れてきた品を研究する機会を与えられた(中略)我々はある意味、生の情報を手にしようとしている」

一方のクラーク氏は、このペンダントを売却すれば人生が一変する可能性がある。クラーク氏は、ペンダントの売却金を4歳の息子の教育費に充てたいと語った。

「人から宝くじに当たったみたいだと言われるが、宝くじに当たることはあっても、クラウンジュエル(王冠を飾る宝石)は発見できない」(クラーク氏)

この発見は、大英博物館が2020年の宝物に関する年次報告書と21年の運搬可能な古文化財スキーム(PAS)に関する年次報告書の一環として発表した。同報告書によると、21年に記録された考古学的発見は4万5581件(1000件以上の財宝の発見を含む)に上り、そのうちの96%は金属探知機を使って宝探しをしている人々によって発見された。

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