Fashion

最もスタイリッシュなユニホームに潜む秘密 ワールドカップ2018

「お前はそのユニホームにふさわしくない」。大観衆からそんなチャントを聞かされたら、あわれなサッカー選手は身震いしてしまう。サポーターにとって、これは選手に投げかけることのできる侮辱の中でも最悪のもののひとつだ。ユニホームは神聖なものだ。ユニホームは宣言する。あなたが誰なのか。あなたが何に忠誠を誓うのか。そして、重要なことは、別のユニホームをまとったフィールドの向こう側にいる「あいつら」と、あなたとをはっきりと区別するのだ。

我々の英雄たちへの最新のユニホームに責任を持つ世界企業が、そのデザインについて、とても真剣に受け止めていてもなんら驚きはない。アディダスやナイキ、プーマといったブランドには専門の部門がある。世界中からデザイナーが集まり、ユニホームを理想のものにすべく、たゆまず働いている。スポーツの世界最高峰の舞台のひとつ、サッカーワールドカップ(W杯)のためにデザインをするとき以上に、彼らの努力に対して厳しい検査の目が向けられることはないだろう。

ロシア大会に使われるユニホームはこれまでのものよりも厳しく品定めを受け、議論の的となっている。サッカー選手のユニホームはファッションのステータスシンボルへと変貌(へんぼう)したのだ。おしゃれで新しいサッカー関連のウェブサイトや雑誌は、若くてファッションに熱心なユーザーに向けて、細部にまで気を使ってユニホームを取り上げている。ストリートファッションを扱っているサイトも同様だ。SNS上ではナイジェリア代表の新しいユニホームの写真が4万5000件もの支持を獲得したほか、インスタグラムにもたくさんのコメントが投稿された。

チームが全員そろい、腕を組んで、カメラに向かって笑顔を見せている写真を使って新しいユニホームを発表するという時代は過ぎ去ってしまった。今では、新しいユニホームがお披露目されるのは、最先端のファッションを切り取った一コマのなかだ。そこにはたいてい、ボールもピッチも写っていない。

今年のW杯では、大手ブランドのデザイナーは主に、過去のユニホームを流行に敏感な方法で再解釈することに決めた。アディダスはドイツ代表とコロンビア代表のために1990年のW杯に立ち戻り、象徴的でクラシックなデザインと21世紀とをミックスさせた。ベルギー代表のユニホームは、1984年の欧州選手権時のデザインに触発されている。スペイン代表とロシア代表のユニホームはそれぞれ、94年W杯と88年五輪のものを参考にしている。

ナイキのポーランド代表ユニホームのキャンペーン用写真。最近では、ファッション雑誌に掲載されていてもおかしくないようなスタイリッシュな写真とともにユニホームが発表されることも多い
ナイキのポーランド代表ユニホームのキャンペーン用写真。最近では、ファッション雑誌に掲載されていてもおかしくないようなスタイリッシュな写真とともにユニホームが発表されることも多い

アディダスだけではない。ブラジル代表の最新のユニホームのために、ナイキのデザインチームはサンパウロのサッカー博物館を訪問し、1970年の優勝チームが身に着けた憧れのユニホームを調査した。イエローのニュアンスを新しいユニホームにきちんと取り込めたか確認するために。ナイキはまた、創造的なナイジェリア代表のユニホームのために過去に目を向けた。ナイジェリア代表の愛称「スーパーイーグルス」にインスパイアされ、ユニホームには、ワシの羽の模様のような大胆なネオングリーンのパターンがあしらわれている。ナイジェリア代表が初めてW杯に出場した1994年のユニホームを思い起こさせもする。

筆者にとって最高のユニホームが生まれるのは、伝統とその国の特色が優先されたときだ。今年のW杯の個人的なお気に入りはアディダスが手掛けた日本代表のユニホームだ。日本の伝統的な「刺し子」を大いに活用し、濃い藍色に白い刺繍(ししゅう)の柄が施されている。わたしは、プーマのスイス代表のユニホームも大好きだ。ユニホームを彩る模様は、山々の等高線でできている。

刺し子柄を取り入れた日本代表のユニホーム
刺し子柄を取り入れた日本代表のユニホーム

ユニホームの歴史家は、国の歴史と土着の文化をデザインの過程に取り込むことが今に始まったことではないと気付くだろう。この様式に属するかつての作品からは、今ではサッカーシャツデザインの殿堂に収まっているユニホームも生み出されている。

アステカ歴がプリントされた1998年W杯のメキシコ代表のユニホームを考えてみてほしい。これは私のお気に入りのひとつだ。1994年の米国大会でアディダスが手掛けたナイジェリア代表のユニホームは、ホーム用とアウェー用の両方に伝統的なナイジェリアの織物の部族的なパターンが使われている。

この先何年かにわたって尊敬の念を集めることになる今年のW杯のユニホームがどれなのか、ながめてみるのも面白いかもしれない。私が賭けるなら、ナイジェリアとドイツだ。とはいえ、フィールドに君臨するのがどの国なのかという点に関しては、それはまた、別の話なのだが。

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